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「マズいな…」
補給地の一角を制圧したユーリが頬についた返り血を拭う。険しくしかめられた翡翠の瞳は、山の合間を走る黒煙を睨みつけていた。イェーガー派の増援だ。向かいの屋根でもハンジとミカサが黒煙を指差している。恐らく企図は同じだろう。
何せ、食い止めなければ出港どころか、ここで全滅する未来が確定する。
ユーリは急いでハンジの元へ飛び立った。
「ハンジさん！」
「あぁ、わかってる！」
「っ………」
ミカサも完全に臨戦体制だ。無謀なことに変わりないが、ここはやるしかない。
ミカサに乗じて意を固め直したその時、睨みつけた先で巨大な炎が上がった。
「え、………」
これにはハンジもミカサも唖然と口を開けた。
彼らだけではない。別の補給地で増援の到着を待ち侘びていたイェーガー派の兵士たちも総じて立ち尽くした。
「増援の車両が…っ、やられた…！」
先も現副団長に補給地を一つ潰されたばかりだ。想定していた以上の犠牲に顔が歪む。が、それはイェーガー派だけではなかった。
船着場では、三体の巨人が蒸気に塗れている。先に雷槍を受けていた鎧と女型は視界を奪われ動くこともままならず、駆けつけた悪魔の巨人も自身に集る兵士を振り払うのに手いっぱいだ。
「今だ！とどめを刺せ！！」
ここぞとばかりに飛び立ち、悪魔に向かおうとする兵士を、蒸気の中から飛び出してきたコニーが討ち返す。
「死ね！裏切り者！！」
即座に飛び回るコニー目がけて発砲する屋根上の兵士を、ミカサが一人残らず斬り殺す。ミカサの背後を狙って銃を構える兵士を、向こうの屋根影からジャンが狙撃する。未だ健全の補給地を、駆けつけた車力が破壊する。
「対人装備で裏切り者を討つ。雷槍を車力に撃ち込め！一斉攻撃だ！！」
空から降ってくる雷槍の雨は、止むことを知らない。
《あぁもう！》
白刃を両手に飛び回るハンジ、巨人に集る兵士を狩るユーリ、かつての同期の喉元を掻っ切るミカサ、銃弾の嵐を振り切るコニー、仲間の背後を守るジャン。
彼らの中で一致しているのはただ一つ。
————躊躇えば、地鳴らしは止められない。
自分が手を汚さねば、仲間が死ぬ。
自分も死ぬ。
世界も消える。
「死守せよ！この島を！俺たちの国を！！」
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2024年2月19日 8時
