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その時、フロックの視界の端で金髪が大きく靡く。追うように目線を向けると、例の巨人がアズマビトの前で盾になっていた。太く長い腕は鈍く銀色の光を放っている。
その視界の向こうには、遠近法のせいか、小さく見える羽のないボート。鎧と女型が仲間を握り、踏み潰し、見慣れない金髪の巨人がアズマビトを雷槍から守っている。
金髪の巨人に雷槍が向かえば、鎧が弾き飛ばして女型が兵士を海へ投げ飛ばす。直接項を狙おうものなら、背中に目でもついているかの如く、ワイヤーごと吹っ飛ばされ、開けた視界の先に硬質化した皮膚に覆われた項が顕になる。
だが、巨人にばかり気を取られてはいられない。背後から恐ろしいほど殺気立ったアッカーマンが迫り来る。
兵士の数も、補給の手数も、どう考えても優位はこちらであるはずなのに、一向に戦況が傾かないのはなぜだ。
鎧と女方を後回しに、アズマビトを狙っても金髪の巨人が立ち塞がる。どういうわけか、硬質化が異常に硬い。鎧と違って硬質化を一点に集中させているからだろう。硬質化を発現させる速度も異常だ。雷槍をほとんど振り払っているせいもあるが、とにかくこちらの攻撃を全てかわされている。
フロックの顔に焦りが浮かび始めた。彼らは本当に大陸で飛行艇を完成させるつもりだ。それの意味することは、彼にとって絶望の一言でしかない。
「ありったけの雷槍を持って来い！奴らは船でエレンを殺しに向かう気だ！！なんとしてでも船を破壊しろ。エレンが殺されればパラディ島は血の海に沈む。全世界から報復され、お前たちの親や兄弟も子供も皆殺しだ」
彼の目の前には、恐怖や憎悪に支配された顔が並んでいる。まるで、四年前の彼のような——。
「————心臓を捧げよ！」
四年前、心の底から憎んだ悪魔のように。
そして、彼の背後に忍びよる長身の影が、また一人。
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2024年2月19日 8時
