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これまで彼女に命じてきた任務は、巨人の力で敵を殲滅すること。時には隠密作戦でナイフやら何やらで暗殺を命じたこともあるが、どっちにしろ殺すことが最終的な着地だった。
それが今回は「殺すな」「巨人にもなるな」だ。流石に勘の良い彼女じゃなくとも違和感は感じるだろう。
ジークは眼鏡を掛け直し、床に置いていた紙袋を手に取った。
「君が大得意なあれを使ってもらう。まあ実物は作戦開始まで持ち出せないけど、衣装くらいは大丈夫だろうからね」
そう言いながらジークは紙袋に手を入れる。中から出てきたのは洋服のようだった。
「………………」
「君は敵陣に紛れ、奴の注意を引く。奴は俺を仕留めたくて仕方ないだろうが、自陣に侵入している敵を見過ごすこともできないからな。必ず君を追うはずだ。上手く扇動してくれ」
彼女が手元の布に目線を落とす。青い羽と白い羽が交差した大きな翼のエンブレムの、深緑のマントと茶色いジャケットだ。
「どうだ、懐かしいだろ」
「…………別に」
ジークはそれとなく言ってみたが、彼女は動揺するでも困惑するでもなく、いつもの淡々とした調子でそう答えるだけだった。
「…ま、懐かしさもあるわけないか」
ただ彼女にその記憶がないことにジークは密かに胸を撫で下ろし、椅子から立ち上がって未だ開けっぱなしになっている部屋の扉の方へ足を進めた。
「じゃ、時間になったら呼びに来るから。それまでに着替えておいてね」
そう言って手をひらひらと振ってジークは部屋を出た。
彼女はその背中を短く見送り、再び手元に目線を落とした。
ジークの言った懐かしさなど何も感じない。ただ、やけに手にしっくりきているというだけだ。
彼女は目線を上げて窓の外を見やる。空は少しだけ赤らみ、もうじき陽が沈みそうだ。舞台が始まるのは日没だから、まだ時間はある。
彼女は渡された服をベッドに置き、先程テーブルに置いた紙切れを手に取った。
「………………」
そこに描かれているのは男の似顔絵。これがどこまで似ているのかは定かではないが、特徴くらいは捉えているだろう。まあ絵から読み取れる特徴と言ってもたかが知れているが、それでも覚えておくのに無駄なことはない。
「………三白眼と、…仏頂面。」
舞台開幕まで、あと2時間——。
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あんこもち(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。確かにマーレ急襲時にはスカーフを巻いていませんが、リヴァイはやはり通常時にはスカーフを巻いていることが多いのでそのように表現しております。分かりにくく申し訳ございません。 (11月19日 11時) (
レス) @page35 id: d1838a7b16 (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 854年のリヴァイさんは最初の方だけスカーフをしていなかったと思いますが... (11月19日 0時) (レス) @page35 id: 633d257dbd (このIDを非表示/違反報告)
愛 - 最高スギィ！もう毎朝学校行く前に読ませて貰ってます‼︎これからも頑張って下さい応援してます❤️ (5月15日 2時) (レス) id: 0f2e86f85b (このIDを非表示/違反報告)
んご - めっちゃ最高です！更新頑張ってください！！ (4月30日 7時) (レス) @page6 id: 2dc34b573e (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 頑張ってください！ (2023年4月1日 23時) (レス) id: 2973651174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年3月22日 16時
