80 -Epilogue- ページ31
「…そうか」
ハンジがぽつりと呟き、目線を落とした。その横顔はどこかほっとしたような笑みを含んでいた。目は伏せられまつ毛が影を落とし、緩く口角が上がっている。
「……ふふっ、」
ハンジは小さく笑うと目尻をスッと拭い、リヴァイの方へと顔を向けた。
「そんなこと言われたら、巨人になんかできないね…っ」
それをあまりの満面の笑みで言うのだから、リヴァイはつい顔を背けてしまった。
あの時の選択は間違いではないと必死で自分の中で結論付け、それ以上は考えないようにしていた。
だがそれを間違いだと言う人間はごまんといた。それもそのはず――天秤にかけられたのは次期団長と新兵だったのだから。この一年、至るところで是非を問われた。そのせいか、あの選択は間違っていたのではないかという考えを拭え切れず、心のどこかに引っ掛かったままだった。
だがそれを初めて肯定されたのだ。ずっと否定され続けていた心にほのかな愉悦が広がり、リヴァイはきまりが悪そうに頭を掻いた。
「…………」
そのまま、言葉を発することなく目線を海の方へと投げる。
どこまでも果てしなく広がる青い蒼い海。まるで彼女の瞳のように澄み切った蒼色は、波打つ度に太陽に反射しキラキラと光る。波の満ち干きは揺れる心を落ち着かせてくれる。
「………綺麗だな」
「…あぁ。自由なんてものは無かったがな」
「……うん。」
胸に空いた穴はこれから先も残り続けるだろう。それでも彼らはこの世界で生きなければならない。壁の向こう側に広がるものが自由ではなく敵だらけだとしても。
「……だが、」
亡き者の遺志を水に流すことのないよう、この世界のさらに向こう側へと歩みを止めることはない。
たとえ隣に彼女がいないとしても――。
強く、生きなければならない。
「………悪くねぇ」
Name of Love――その名を胸に秘めて。
――The End.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1313人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかまる(プロフ) - 素敵な作品で終盤はずっと泣いてました…。この作品に出会えてよかったです。ありがとうございます。 (12月31日 10時) (
レス) @page32 id: eb52eba48a (このIDを非表示/違反報告)
ああ - 最後めちゃくちゃ泣きました。面白かったです！！ (9月8日 23時) (レス) @page33 id: d425432768 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました…… (2023年4月3日 0時) (レス) @page32 id: f171f4e286 (このIDを非表示/違反報告)
かりおすとろ(プロフ) - 細かいキャラ設定、原作への忠実さ、どれも素晴らしく、キャラクター・作品への愛が非常に伝わってきました。とても素人は思えぬ構成とキャラ設定、まるで公式作品を読んでいるようでした。結末も原作らしくて好きです。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2023年3月31日 23時) (レス) id: 33ef6f580f (このIDを非表示/違反報告)
輝音翔(プロフ) - この作品何回も読み返すぐらい好きでまさかの続編ですか。ありがとうございます！とても素敵な作品の続きが見れるなんて… 応援してます！頑張ってください！ (2023年3月22日 20時) (レス) id: 0627dd355a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんこもち
| 作成日時：2022年9月10日 8時
