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木箱を取りに行ったハンジが副団長室に戻ったちょうどその時、奥の部屋から大きな音がした。
慌てて音がした方へ駆け寄ると、扉の先でリヴァイが膝をつき肩を震わせていた。
先の大きな音は彼が膝をついた音だったようだ。
「リヴァイ、」
どうしたの、と声をかける前に視界に入ってきたルアナの自室。ハンジも思わず言葉を詰まらせた。
至るところから彼女の面影が窺え、何ならうっすら姿さえ見えそうなくらいにその部屋は生きていた。部屋の主がいないという点だけを除いて、ルアナが生きていたあの時のままだった。
ハンジはそっと彼の隣で膝を折り、珍しく震えるその背中に手を添えた。
「あの子はちゃんと、生きて帰るつもりだったんだね。死ぬ気なんてさらさら無かったんだ」
そうじゃなきゃ、きっとこの部屋も執務室のように整然としていただろうから。
「自分が死ぬかもなんて、微塵にも考えてなかったんだよ」
あのリヴァイが人前で泣くなど普段なら考えられないが、この部屋を見てしまっては泣かない方が変だろうとハンジは彼の背をそっと撫でる。それほど、この部屋は彼女の生きた
ハンジだって気を緩めば泣きそうだ。
「……でも、もう…、いないんだね」
あの子はもう、帰ってこない。
「私たちが生きなきゃ。あの子が生きたいと願った世界で」
リヴァイの小さな嗚咽とハンジの落ち着いた声が静かな部屋に響く。
――死者に意味を与えるのは生者。
エルヴィンがよく言っていた言葉。
そして今ハンジら生還者がなさねばならないこと。
ただそうするには、まだ時間による癒えが必要だった。
「……でもまだ、辛いな…」
彼女の死を受け入れるのには、まだ――。
リヴァイはそっと胸元で揺れる銀環を服の上から握りしめる。
彼らの間をそっと秋風が吹き抜けた。
71 -The Other Side of The Wall-→←69
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あかまる(プロフ) - 素敵な作品で終盤はずっと泣いてました…。この作品に出会えてよかったです。ありがとうございます。 (12月31日 10時) (
レス) @page32 id: eb52eba48a (このIDを非表示/違反報告)
ああ - 最後めちゃくちゃ泣きました。面白かったです！！ (9月8日 23時) (レス) @page33 id: d425432768 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました…… (2023年4月3日 0時) (レス) @page32 id: f171f4e286 (このIDを非表示/違反報告)
かりおすとろ(プロフ) - 細かいキャラ設定、原作への忠実さ、どれも素晴らしく、キャラクター・作品への愛が非常に伝わってきました。とても素人は思えぬ構成とキャラ設定、まるで公式作品を読んでいるようでした。結末も原作らしくて好きです。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2023年3月31日 23時) (レス) id: 33ef6f580f (このIDを非表示/違反報告)
輝音翔(プロフ) - この作品何回も読み返すぐらい好きでまさかの続編ですか。ありがとうございます！とても素敵な作品の続きが見れるなんて… 応援してます！頑張ってください！ (2023年3月22日 20時) (レス) id: 0627dd355a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2022年9月10日 8時
