20 ページ21
「分からない」
「っ、！」
「だが大半はあの爆風に巻き込まれたようだ。我々は甚大な被害を受けている」
壁の向こうだけじゃない。ルアナたちがいるこちら側だって、今しがた多くの手練れの兵士を吹き飛ばされたばかりだ。それも現在進行形で――。
獣の巨人が小型だけを動かしたのは、兵士を前方の一個所に集まるようにするための誘導だった。そのせいで、小型の巨人を相手にしていたディルク、マレーネ、クラース班は先の投石で全滅した。
すなわち、内門側に残された兵力は新米調査兵士と団長エルヴィン、副団長ルアナ、そして――。
「ルアナっ！」
兵士長リヴァイ、それから――。
「ふ、くだんちょ…、すみ、ません…」
「ユーリさんっ、無理しないで」
腹部から出血が見られ、リヴァイに支えられているユーリと、頭から血を流すベン。
たった、これだけの兵士だけ。
「っ、…………」
ルアナはこちらに向かってくるリヴァイたちから目を逸らし、顔を伏せた。
その唇はきつく一文字に結ばれ、微かに震えている。両手も爪が食い込むほど強く握りしめられ、肩が小さく揺れる。
「ユーリ、大丈夫か」
「はい。すみません団長…」
「ベン、ユーリを連れて壁の上へ。生きてるなら応急処置だ」
「はいっ」
ベンがユーリを抱えて壁の上へ上がっていく。
声が届かないところまで彼らが離れたところで、ルアナの唇がふっと緩んだ。
「……ごめんっ」
発せられたのは謝罪の言葉だった。
「…………」
「私が、…もっとうまく、配置をばらけさせていれば……っ」
指揮を執っていたのがエルヴィンだったら、ディルクたちを犠牲にせずに済んだかもしれない。私が判断を間違えなければ、ユーリとベンが重傷を負うこともなかった――。
「私のっ、力不足のせいでこんな――」
「いや、違う」
「っ！」
だが、エルヴィンは冷静にそれを否定した。
ハッとして顔をあげたルアナの目に涙は浮かんでいなかったが、瞳の奥が揺れている。
「ルアナ、君の指示は的確だった。あの状況では、私でもそうした」
「っ…………」
「奴らはいつだって我々の予測を遥かに超えてくる。我々がどんなに策を講じても――」
とその時、大きな衝撃音が彼らの頭上で響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1095人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼空 - 夢主死なないで泣 (2022年9月10日 21時) (
レス) id: e5ebd447b1 (このIDを非表示/違反報告)
まんごすちん(プロフ) - ひぇぇぇ…胸が…締め付けられる…続きが…気になる…ｸﾞﾌｩ (2022年9月10日 0時) (レス) @page49 id: bff1e932e9 (このIDを非表示/違反報告)
もちち(プロフ) - どどどどどどうなってしまうのか気になって夜しか眠れません…！！！！初コメ失礼しました、！！！ (2022年9月4日 23時) (レス) @page44 id: 65f0ff2c55 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 夢主は死なないですよね？生きてほしい… (2022年9月2日 22時) (レス) @page39 id: ca2fa3b081 (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - もう何度泣いたか分かりません(*_*)本当に素敵な小説をありがとうございます。是非最後まで完走してください（涙）応援しています！毎日の楽しみです。 (2022年8月29日 21時) (レス) id: 303cf5547a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんこもち
| 作成日時：2022年8月1日 9時
