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「ユミルを助けに行かせてください！！ユミルが、まだこっちに来れてないんです！」
「おいクリスタ！いい加減に――」
「エレン。」
ヒストリアを止めようとしたエレンに、ルアナはさっと目配せをする。エレンはとっさに口を噤んだ。
「私、ユミルと一緒に自分たちのために生きようって決めたんです！！あの、裏切り者を…、私が助け出さないと！！」
「おい、クリスタ！副団長の前なんだぞ！少しは落ち着けって」
「ジャンの言う通りだ、クリスタ。お前らしくねぇよ」
「まずは落ち着こう。ね？クリスタ。君はすっごく疲れているんだ――」
「だから！！私はクリスタじゃないの！！」
興奮して声を張り上げるヒストリアに、困惑する104期生たち。その中で、ルアナだけは落ち着いているように見えた。
「クリスタは私が生きるために与えられた役で……。でももうやめたの！……もう、良い子のクリスタはどこにも居ないの」
皆が気まずそうに顔を背ける。やっと皆が落ち着いた時、ルアナが静かに口を開いた。
「ヒストリア、」
ヒストリア。そう呼んだ彼女に、ヒストリアはハッと顔を上げた。
「悪いけど、ユミルは助けられない」
きっぱりと言い切ったルアナに、ヒストリアの顔が一瞬で絶望の色に変わる。
「そんな…！どうしてですか！ユミルは巨人だけど、ライナーたちの仲間じゃないんです！！」
「ユミルが味方か敵か、それは今問題じゃないの」
「問題じゃ、ない……？」
「そう、問題じゃない。今はここにいる全員が壁内に帰還することが最優先なの。ヒストリア、あなたなら分かるでしょ？」
ルアナは副団長という立場から、冷静さを失ったヒストリアの願いを受け入れることは許さなかった。
当然、ヒストリアは納得がいかないのだろう。俯き、唇を噛み締めている。
ルアナは彼女から目を離し、向こうに集められている負傷兵たち、そして意識を失っているエルヴィンの姿に目を向けた。
「ここにいる半数が重症、さらに団長は意識がない。調査兵団は、これまでに無いほど壊滅的被害を受けている」
「っ…………」
「失った命や奪われたものを嘆く余裕は、今の私たちにはないの」
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2021年7月28日 19時
