Name of Love ―悪魔の子編Ⅰ-2―《進撃の巨人》 (ページ15)

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「それにイェーガー派はまだ、どの兵団にどれだけ潜んでいるか分かりません」

「そうだ。俺の目の前にいるかもしれない。今お前らが自爆しても不思議じゃない」

「ローグ大尉。今我々が仲違いしている場合ではないことが、お分かりになりませんか」

「じゃあどうやって証明するんだ？それができない以上は、お前ら調査兵団を野放しにしておくわけにはいかない！」

ダメだ、話にならない。

ルアナが小さく息を吐き、再び憲兵団を見上げる。その何も映さぬ青黒い目に、憲兵団は顔を引き攣らせた。

「どうやら、女王をお護りする高貴な方々は、客人の前での立ち振る舞いをご存知ないようだ」

「っ………」

これには師団長のナイルでさえ、ぐうの音も出なかった。

ナイルの脳裏に四年前の彼女の姿が蘇る。

『その王が巨人を倒してくれるのか？我々人類をお救いくださるのか？——違う。巨人を倒しているのも、人類を救おうと真に心臓を捧げているのも我々調査兵団だ』

あの時の彼女も恐ろしかった。彼女より一回りも二回りも上の兵士がいる前でさえ、彼女の言葉には強い説得力があった。

一兵団の副団長であったあの頃でさえ、壁の外で死んだ兵士を『それは全て、指揮を執る私たちの責任だ』と、彼女は言い切った。そうそうできることではない。それは師団長という立場のナイルなら容易に理解できる。

大きな責任を一身に背負うというのは、生半可な覚悟でできることではない。

『あんたたちが堕落している間に、壁外の調査兵団、城塞都市の駐屯兵団は命を懸けて巨人と戦っている。あんたたちがくだらないと笑う、心臓を捧げてだ。それを知ってもなお、素知らぬ顔を貫くつもりか？』

鋭利な冷たい眼光は今も変わっていないが、あの頃よりも司令となった彼女はまた一段と恐ろしい。

ナイルが何か言わなければ、と顔を顰めた時、入り口の扉が大きな音を立てて開いた。

「ルアナの言う通りじゃ！ローグよ。客人の前でよさぬか！仲間同士でいがみ合うより先にやるべきことがあるだろう！」

パラディ島全土及び駐屯兵団最高責任者ドッド・ピクシスとその幹部たちだ。

ピクシスの重厚な風格に、さすがのローグも押し黙る。

こうした貫禄は役職が上がったからといって、そう簡単に出せるものではない。