17 ページ8
「エリちゃん、ワクワクさんだね」
「うん」
「A、平気か？」
雄英高校の敷地内に入ってしばらく、先陣切って歩く通形とエリの背中を追いAは舗装された道をじっと見つめながら歩く
その顔は蒼白として、なのに薄ら汗が滲む
少し前を歩きながら相澤は心配そうに声をかけるも頑なに前を向かないAは俯いたままただぎゅっと左手首を握っていた
「(まだ早かったか…)」
隣を歩く温田がAの肩に手を添えながら共に歩く
すぐ近くを人が通ればAの肩はビクつき温田に隠れるように身を固くする
俯くのは顔を見られないため
今まで一人でこうして生きてきたのだろうと見せつけられる
こびりついて離れないAの中の恐怖
ここにお前に危害を加える人間なんていやしない
そう言葉で伝えても、Aは頷くだけだろう
「相澤先生！」
ふと名前を呼ばれそちらを振り返るとA組クラス委員長である飯田が真剣な面持ちでこちらを見つめる
何かあった、と瞬時に悟った相澤は一瞬温田に視線を向けて足早に飯田の元に駆け寄る
「Aくん、広いですねー。あ、あっちに出店があるようですよ。何か食べたいものはありますか？」
「食べたい、もの…」
Aの気を紛らわそうと温田は務めて明るく声をかける。相澤の向かった方とは逆の位置に目を向けAの意識をそらす。人混みに震えてるAをこれ以上不安にさせないようにと思っての事だった
今のこの状態で食欲なんてわかないだろう
けれど、周りに目を向けさせなければこのまま下を向き続けてしまう
世界が広いことを
周りは思っているほど怖くはないということを
不安に揺れるブルーサファイアに普通の景色を見せてあげたい
「…A？」
「！」
背後から聞こえた声にAの肩が一際大きく揺れた
それは、温田にも馴染みあるものになった少年の声
「(ああ、本当にヒーローとはすごいものですね)」
あんなに震えてたのがたった一言で止まってしまう
不安に揺れていた瞳に光が灯る
「A、だよな…それに温田先生も……」
「はい、エリちゃん達にお誘いいただいて遊びにきました。轟くんのそれはクラスTシャツですか？」
「はい、俺は演出なので舞台にはあがらないから」
そう言いながらも轟の視線はまっすぐAに向けられていて、少し丸まった背中に一歩近づき、そして立ち止まる
温田が少しAから離れると、不安そうに揺れる碧が温田を見つめる
それに大丈夫、と思いを込めて一つ頷いた
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 334人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - 結華さん» コメントありがとうございます！こちらは男主人公として少し甘い感じで進めて行こうと思っています！（すっっごいBLにはならないと思うのですがカップリングとしては轟落ちです）優しいコメント嬉しいです。更新頑張っていきます！ (2022年9月12日 17時) (
レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
結華 - ほんとに、、本当に好きです…！！これから轟くんと主人公がどうなっていくのか楽しみです！！！ (2022年9月12日 11時) (レス) @page50 id: e2320a25d7 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - 華さん» コメント＆見ていてくださってありがとうございます！！！！嬉しい！その言葉でお疲れも吹っ飛びます( ˃ ᵕ ˂ )これからも楽しんでいただけるよう聞いていきますね！ (2022年9月6日 23時) (レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 更新お疲れ様です‼︎作者様の作品全部大大大好きで毎日見てます‼︎👀これからも頑張ってください！！！！ (2022年9月6日 19時) (レス) id: d1e7a9b3ce (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - せつなさん» コメントありがとうございます！読んでいただけてるの凄く嬉しいです！！疲れも飛んできますね( ᵒ̴̶̷̤ ᵒ̴̶̷̤ )✧*。完結まで書ききりたいと思います！ (2022年9月5日 23時) (レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年8月18日 11時
