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昔は通っていた小学校
そこでは同じ歳の子どもたちがヒーローに憧れていた
学校できいたその言葉は家では言ってはいけない言葉だった
…父がすぐ怒るから
女の人が、悲しそうな顔をするから
よく記憶が飛んでいた
気づいたら朝で、女の人が泣いていた
「もうやめて」と父に縋っていた
"絶対命令"
それが、父の個性の名前だった
血縁関係の者にだけ、強制的に命令を聞かせられるというものだった
父には兄弟はいなかった
父の両親も他界して
血縁関係のあるのは僕だけだった
元より自尊心の高かった父、頭もそれなりによくそこそこいい会社に勤めていたがヒーローへの憧れも社会での注目度も父の個性では認めてもらえず思い描いていた未来と現実のギャップに耐えかね僕が生まれ暫くして、父は壊れてしまった
…自分の個性を思い通りに使える人材が出来たことに喜びを感じていたのだ
知らない間に怪我を負っていたり火傷、なんてのもあった
その度に女の人は泣いて僕を強く抱き締めてくれた
あの日までは…
僕の個性が発現した日
僕を守ってくれた母の記憶を全て消してしまった
何が起きたのかわからなかった
次に目が合った時の母は
なぜ自分が薄暗い部屋にいるのかも
ぼろぼろな姿の僕も
目の前でバットを握りしめる父も分からなく恐怖に発狂した
…その後どうなったかは知らない
この家からあの人はいなくなった
それからずっと父と2人きり
僕の個性を恐れてか、父は僕と目を合わせないようになった
下を向けと命令され、逆らうなと力でねじ伏せられた
守ってくれる温もりがなくなった、自分でなくしてしまった
そんな中で誰かに助けを求めようなんて怖くてできなかった
自分の目が、個性が父同様に恐ろしかった
反抗しなかったのをいい事に、父はその後も僕の支配を強めていった。中学にはほとんど通ってない…その頃には僕を使って金儲けすることを覚えた父によって小悪党みたいなことは一通りやった。僕の個性を使えば目撃者はいてもいないようなもの。バレることはなかった
「ちゃんと仕事はしてきたんだろうな！金は、言え！」
「仕事、はしました…金は、こ、こに…」
ポケットから昨日受け取った金を差し出す
いつからか支配されてても意識はハッキリするようになった…記憶が無い方がどんなに良かったことか。自分の意思とは関係なく口が、手が、身体が動く
……こんな人生
生きてるとは思えなかった
．
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作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年3月7日 15時
