【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ36)

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＿＿…

あれから何日経ったのだろう

一日も経っていないような、何年も経っているような

時間の感覚はいつの間にか消え去っていた

固い、座り心地の何もない椅子に座らされ、両腕は肘置きにがっちり固定され動くことは出来ない。だがしかし、そのおかげでこの椅子からずり落ちる事無く今の今まで座ってられると思うと良いのか悪いのかもうよく分からなかった

…身体に力が入らない

目を開けているのか閉じているのかも分からない

いつからか視界は真っ暗で時折薄ぼんやり見える程度

個性の使いすぎによる反動か、視力がだいぶ低下していた

今までここまで個性を使ったことがないからどういう状況か理解出来ていない

理解する力も、Aには残っていなかった

「……ぅ……」

なんとなく陽の光がうすら感じる気がする
近くに窓があるのだろうか…声を出したら誰かにみつけてもらえるだろうか…いや、散々誰かもわからぬ人の悲鳴を聞いていたのだ。それなのに誰も助けが来ないのだから今声を上げても無意味だろう

「(……ここは、どこなんだ…)」

黒モヤのワープで飛ばされたから今ここがどこなのか皆目見当もつかない。場所も時間も何もかも分からない

「ふむ、順調。やはりわしの見解は正しかったの」

「……」

聞こえてきた声にびくつく気力もない。誰かいるとは思ったけども、聞き覚えのあるこの声は味方などではない。ここに自分を呼び寄せた1人であり自分の個性を求め欲望のままに好奇心を満たす道具として扱う男の声であった

バシャア……

「！！っ……ゲホ…っ」

「おー。起きとったか？」

いきなり頭からかけられた水の多さに溺れかけ鼻や口にいくらか入り込み咳き込む。髪の先を滴がこぼれ落ち服が張り付き気持ち悪い

「そろそろいいかの？次始めるぞ」

「も、やめ……っ」

何を始めるのか、それは分かりたくもない。けど全身でそれを拒絶したい。朧気な視界でなんとなく正面に男がいることがわかった。すぐ髪を掴まれる感触と痛みに声が漏れる

「あー、お前さんの意見は元より聞いてないんじゃ。ほれ、よくみろ。次はあいつだ」

「おい、何すんだ……そいつなんでそんな弱ってんだよ！」

「A、個性を発動しろ」

これは身体に染み付いた強迫観念だろうか

言葉尻強く言われると身体が震えてしまう

使いたくないのに、個性を発動して朧気に見える正面の男を視る。途端聞こえてくる絶叫

また1人、誰かの大切な記憶を消している

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