【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ35)

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「脳無、名前くらいは知ってるかな？より強い脳無を作るために君のお父さんに協力してもらってるんだ」

「協、力…」

「そう、ひとつの体に1つの個性が世の理。複数与えようとすると脳が耐えれなくなるんだ。ドクターはそれを脳の容量を超えるからと説いた。容量を、増やすのは大変だから既に入ってるデータを消せないかなって思ったんだよね」

「そこで個性届を漁っていたらでお前さんを見つけたんじゃ」

動かす手は止めず話に加わるドクターと呼ばれる男。全然頭の処理能力が追いついてなかった。容量？データ？なんの話しをしているんだろう

「脳無に過去や思い出は不要じゃからな、そんなもののために脳を使うのはもったいない。お前さんの個性でそれを消して容量を開ければその分個性の適応力が上がるかもしれんじゃろ」

「物は試しって事で、裏港出身ならいなくなっても誰も困らないしね」

「あ…」

ガツンと鈍器で殴られたような衝撃が走った

自分はよっぽと生きる価値のない人間なんだなと思い知らされる

こんなよく分からない場所で

よく分からない生き物を作ろうとしている非人道的な人達に拘束され

個性を無理やりに使わされて

逃げ出したいくらい辛いのに

今この状況に気づいてくれる味方が誰一人いない

裏港出身

それは言い換えれば社会で真っ当に生きられない人が行き着く場所

社会から隔離された孤島のような所の住人

いてもいなくても誰も困らないし

気づかれない……

「おお、癒着がスムーズじゃ。これはいい感じだ」

「ふふ、楽しそうだね。ドクター」

優しく、Aの頭を撫でる大きな手

それを今は怖いと思わなかった

怖がっても仕方がないんじゃないかと思ってしまった

「おや、少し疲れたかい？しばらく眠るといい。まだ何体もお願いしたいからね」

キィン…と耳鳴りがする

途端、眠くもないのに意識が朦朧とする

父の個性はこの男が持ってるのか、とふと思った

絶対的存在が父からこの男に変わった

きっとただそれだけ

今までと何も変わらない

暗転する世界でふと石鹸の香りが鼻をくすぐる

「(あぁ、次に目が覚めたらあのベッドの上だったらいいのに…)」

あの部屋は大嫌いな場所だったのに

今はどうしようもなく恋しく思えた

そんな淡い夢が叶うはずもなく
この日からしばらくAは
AFOによって脳無となる人間の記憶を消す地獄の日々が始まったのであった

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