【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ34)

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「ああああああああぁぁぁやめろおおお」

誰かの叫び声が耳を劈く

それはハッキリと聞こえているのに

視界はどこかぼやけなんとなくのシルエットしか捉えることが出来ない

「やめろっA…消すな、もう……！」

父さんの声がやめろと叫ぶ

だけど、自分で自分をどうすることも出来ない

いつも命令するのは父さんの方なのに

どうして俺に懇願するんだ……

「あが、は……」

「記憶削除完了かの、じゃあもう一段階はじめようか」

そんな声が聞こえ、その後はひたすらに粘着音やドリルのような男、固いものが折れるような液体がこぼれるような様々な音を耳が拾う。ぼやけた視界には赤や眩い光と人影のようなものがなんとなく見えるだけ

椅子に座らされ縛られているのか身体に圧迫感がずっと残る。自分の意思で動かせないのだから逃げることなどないというのに

「いいね、見るだけで記憶を消せるのか。不都合なことを全てもみ消してしまえるね。そばに置いとくにはいい個性だ。弔の役にもたちそうだね」

「…っは……！」

そっと頭を撫でられる感覚と同時に急に意識が戻ってくる。呼吸を止めていた訳ではないのに詰まっていた息を一気に吐き出し心拍が上がる。途端に押し寄せる圧倒的恐怖

今、頭を撫でて隣にいるのは誰だ

「ほら、よく見てご覧、あそこにいるのは誰だと思う」

「…あっ」

どこか楽しそうに優しい手つきでAの顎に手を這わせてそっと視線を誘導させる。耳元で囁かれそこからぞわぞわと鳥肌が全身を伝う

ずっと先程から動いている音の元凶。
脳が警鐘を鳴らす、そっちを見るなと訴える

「あ、あ……そ、んな……うぇ……っ！」

瞬間的に何が行われているのかを察したA。全身でそれを拒絶し耐えきれず顎を掴まれたまま胃液を吐き出す。膝を汚すがそんな事どうだってよかった。呼吸が荒れる。目元を涙の膜が覆い恐怖に全身が震えあがる

むき出しの脳がみえた

人の足がみえた

直感的にそうなんじゃないかと思った

「と、さ……ん…」

「そう、君の絶対的王様。今は裸の王様。あ、今ちょっと上手くなかった？」

けらけらと笑う男
何が楽しいのだろうか、今目の前の光景は非人道的な事だというのに止める素振りは一切ない。それは首謀者だから

何をしてるかなんて知りたくもない

キョロキョロ視線が彷徨う
顎を固定されていて見たくもないのに視界に入る床に流れる夥しい赤が怖くてたまらなかった

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