【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ29)

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荼毘とトガをそろそろ行かせようとした所で滅多にならないノック音が室内にこだまする。間髪入れずに聞き覚えのある声と共に扉が開き想像していた通りの男が顔を覗かす。…こちらの返事を待たずに扉を開けるならノックする意味がないのではと思うが面倒だから口には出さない

「死柄木さん、邪魔するぜ」

裏では顔が広いため物怖じする様子もない儀欄が相変わらずのイラつく笑みを浮かべ室内にズカズカと入ってくる。こいつの情報に世話になることも多いため多少のことは目をつぶる。しかし、ついで慌てて入ってくる不躾な足音に死柄木は警戒を強め殺気をそちらに向ける

たたらを踏んで入ってきたパーカーのフードを被った小柄な人影。ついで酒を飲んでいるであろう赤ら顔の雑魚っぽい男。前にも似たようなことがあったなと隣に当たり前のように佇む荼毘とトガが初めて来た時を思い出しあの日の不愉快さを思い出し苛立ちが増す。見た感じガキ、それに初対面で顔を隠してる時点で礼儀がなってない。

「…」

と、思ったものの少し椅子から上げた身体をまた椅子に下ろす。すぐにでも攻撃しようと思ったが前とは違う目の前の男(…フードではっきりとは分からないがおそらくそうだろう)の様子に口角が思わず上がる

「…へぇ、ガキの癖に勘はいいようだな」

どこのくそ生意気なガキだと思ったが、この場の空気をちゃんと読める利口なガキのようだ。必死に震える身体を押し留め己の立場を弁えこちらに反抗する気がないのを必死で示そうとしている。けど、そこらにいる平和ボケした奴らとは違ってどこか一本芯が通っているような苛立ちにも似た光を感じる。その立ち姿が綺麗だと思ってしまい死柄木は満足気に4本指をテーブルに這わせ、指を鳴らす

「儀欄、こいつらは？」

「前に黒霧さんから依頼受けてたやつですよ、やっと今日会えたんで急いで連れてきたんだ」

「ありがとうございます」

「黒霧、どういうことだ」

「…ドクターが所望していた人物です」

ドクター、黒霧の言葉でそういえば、なんかそんなこと言っていたなぁと死柄木の脳裏にその時の会話がよぎる。脳無を作るのに試したいことがあるとかなんとか言っていたような…

「わぁ！もしかして同世代ですかぁ！！」

この場に似つかわしくないだろう甲高い声と共にトガが緊張で固まっていたフードの男に近づく。ビクリと身体を震わしトガを避けようとしたことでようやっと死柄木達はその顔を見ることができた

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