【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ27)

今日:40 hit、昨日:126 hit、合計:163,862 hit

7 ページ27

「これからの時代、若い芽は育てていかなきゃ。彼のおかげでうちも儲かってるしね推薦しといたんだよね。ぜひ会いたいって」

「ふん、俺の息子だ。呼ばれて当然だろう」

目的のひとつに自分も入っていた…自分を差し置いて進む話にギリ…と唇を噛み締める。この話し合いに自分の意見は必要ない。嫌だと思ってもここにいる時点でもう答えは決まっているのだ。とんとんと話は進みすぐにでも会いたいと言うことで移動をすることに。壁に飲みかけの酒を投げつけ父はAにさっさと立てと怒鳴りつける

「(行きたくない…)」

痛む腰に鞭打ちゆっくりその場に立ち上がる。ふわりと石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。あの無意味な時間に戻りたいと虚空を見つめる。これから何が待っているのか…わざわざ敵連合がこんな底辺で威張ってるような敵と名乗るのもおこがましい人間の相手をするとは思えない。金に困っているのか…だとしたら体良く使われて自分はボロボロにされるのかな

「(今度こそ死ぬのかな…)」

ふと、そんな事が脳裏をよぎる
あまり現実味がないから恐怖もそこまで感じない。ピリピリと嫌な予感が頭の端を痺れさせるけど逃げる術も場所も頼る人もいない…ついていくしかないのだ

＿＿もう警戒する必要はない、こっちにこい

ふと、その言葉を思い出す

薄汚い格好の男だったがきっとあれはヒーローという人種だったのだろう

「(そういえば、あんなあったかいと思った言葉を聞いたのいつぶりだったかな)」

2人の背中をぼうっと見つめ歩きながらふとそんなことを思う。今までかけられた言葉達は(一つ一つ覚えてるわけではないが)大抵裏のある邪な言葉か、くれくれと必死にせがむ醜い言葉、そして圧倒的力でねじ伏せてくる強者の言葉しかなかった

…昔、守ってくれるあたたかな声を聞いてたけど、もう忘れてしまった。だから、久々で新鮮だった

「Aくん、だっけ？随分大人しいね…」

「…別に」

玄関前で待っていたであろう儀欄がこちらに目を向ける。品定めするようなその視線と嘲笑うかのような口元が見てて気持ち悪く、すぐに視線を下に向ける

「あの人に見つかるなんてすごいね、君。まぁ頑張ってよ」

「……」

そう言って先を歩き始める儀欄
その言葉に疑問が浮かぶもあの人が誰なのかも分からなければ何を頑張れと言うのだろうか

この時はまだついてないな、くらいにしか思わなかった

これが絶望の始まりだと知らずに

．