【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ26)

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「儲かって気分いいとこ悪いんだが、ちょいと頼まれてほしいことがあってね…」

「(きた…)」

どうでもいい会話もそこそこに儀欄はとうとう本題であろう話を父に振った。酒を煽るように飲んでいた父は飲みきった瓶を適当に放り新しいものに手を伸ばす

「んだぁ、藪から棒に…」

「最近、裏界隈で名を挙げてる敵連合って知ってるかい？あの雄英襲撃した…」

「(敵連合…)」

あまりピンときていないのか黙って酒を飲み続きを促す父。…けれどAは名前くらいは知っていた。表通りのテレビや拾った雑誌でここ最近よく聞く名前、春頃に入学まもない雄英ヒーロー科の1年生の授業に押し入りオールマイト抹殺を企て、つい先日には保須市のヒーロー殺しの一件にも関わっているという

「(敵連合に目をつけられるようなことはしてないはずだ…そもそも畑違いもいいとこだろ)」

儀欄は父の個性を知ってる風な口振りだった。父も自分から訂正するわけがない大方上辺だけを言いふらしているのだろうことは予想できる。絶対王政、名だけ聞けば強固性だが蓋を開けてみれば身内限定の弱個性。…周りから見ればの話だが。自分にとっては名前通りの絶対的もの。でも周りからしたらなんの意味もないただの負け犬の遠吠えのような言葉にしかならないだろう

「(…そんな個性で敵連合に呼ばれるとは思えない)」

儀欄の話はその敵連合のボスが父に会いたいというものだった。言い訳はまさしく、その強固性をこれからの敵連合に役立ててもらいたい、というもの。役に立つはずがないんだ、行ったところでお荷物とわかって捨てられるのがオチ。もしくは逃走の際の囮に使われヒーローや警察に捕まって牢屋行き。これ程不名誉なことはないだろう

「(…けど、どうせ断らない)」

ぎゅっと膝をだく腕に力を込める
プライドだけは高い男だ
ここで断って負け犬扱いされるのも
腰抜け扱いされるのも気に食わないだろう
それが分かってるからこそ儀欄も余裕な顔で話をしている。交渉でもなんでもない。今日この場で父に会えてる時点であっちの勝ちは決まっていた

「(嫌な予感は当たる…)」

父が家にいる事なんて珍しいことではない、会う機会はいくらでもあったはずだ。なのに今日この日を選んだということは…

「ああ、そうだ。敵連合さんは息子さんもぜひきてほしいってことなんですよね」

「(俺も、ってことかよ…)」

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