【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ3)

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夜の街は人口の光に綺麗を上書きされ本来の美しさはとっくの昔に消えてなくなっているんだろうなと思う
後手後手に着色された所謂ネオン街はゴミの集まりだと…齢15年ほどだが思っている

…そのゴミの集まりの中で生きるしかない己もそのひとつだろうと思うとハッと面白くもないのに笑いが込上げる

「おい、持ってんだろ」

薄暗い横道で目の下に隈を作った男に引きずり込まれ壁に押し付けられそう問われる。それに恐怖は微塵も感じない

「目立つ金髪に青眼ってテメーのことだろっ！」

「…俺の名前知ってんの」

「アァ？！……ミュオだろ！ちげーのかっ！」

「金出しな、そしたら渡す」

そう言えば雑に手が離され少し呼吸が楽になる
皺のよった封筒を渡され中を確認する。大丈夫だろうとポケットにそれをしまい代わりに預かっていたものを男に渡す…個性増強剤。裏で出回ってるそれを売るのが俺の今の仕事

渡すともう用はないと言うことで去ろうとする男の肩を逆に掴みこちらに向き直させる

「何すんだっ…」

「またのご利用お願いしますね」

そう言って片目を瞑り、じっと男の目を見つめる
30秒くらいだろうか…見つめている間に男の体から力が抜けてぶら、と両腕が下がる

「……」

ぼーっとする男を見つめ、そっと踵を返す。またのご利用の時はまたはじめましてだろうな…と思いつつ夜のネオンに溶け込む
ポケットに手を入れるとガサッ…と乾いた音が耳に入る。生きるために金は必要だ。そうじゃなきゃ今日食べるものが買えないし寒さを凌ぐ布団も疲れを癒す家も手に入れる事は出来ない

そんなのずっと小さい頃から刷り込まれてきた
金がいる、金を稼げ、と

「僕、凄いイケメンね…これからどこ行くの」

甘い匂いを纏う女に話しかけられる

「お姉さん、俺の名前知ってる？」

「ふふ、新手のナンパ手口？残念ながらまだなの」

「……そ。ならいいや」

「ちょ…！」

名前を知らないなら関わる必要は無い

関わらない方が身のためだ

「……星がみえないなぁ」

空を見上げても薄明かりと混じって歪な闇を広げるばかり
空には満天の星があるというのをどこかで聞いたことがある。そんなの想像できない…光一つみえないこんな闇の中を"星"があるなんて。この世界の闇が濃すぎるのか星とは誰かが言った理想なのか、この闇に星が煌めいたらどんな風景なのか

「……見れるわけないか」

自分に未来はない

そう思い、家に帰る

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