【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ16)

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息苦しかったのが口元に何かを押し当てられそこだけ新鮮、と表現するのはおかしいのかもだがそれくらい軽くて綺麗な酸素が身体に入っていくのがわかる。喉のつかえが取れたようにスーッと身体全体を酸素が回る。大きく吸い込むとズキリと胸が痛むからたくさんは吸えない。何かに抱えられている感覚がするが目まぐるしく変わる状況に脳が働いていない。世界が回っているような感覚に、飛かける意識をつなぎ止める痛みにもう何も考えられなかった

「リカバリーガールのいる車両はこちらです！」

そんな声がぼんやり耳に届いたかと思うと支えてくれていた何かが止まる。そっとどこかに降ろされる感覚と途端聞こえてくる人の声。自分の喉から漏れ出るヒューヒューという音が違和感すぎてそちらに意識が持ってかれる。しかしそれも、肌色の何かがうっすら視界に入った途端、痛くて仕方なかった胸も息苦しさも目眩もふわっと霧散していく。驚くまもなくどっと押し寄せる倦怠感に言い様のない恐怖が押し寄せ、暗転しそうになる意識を既で堪える

重だるい感覚が全身を襲う

「肋骨は治ったさね。やっぱり身体に障るから細かい傷はまだそのままだよ。また目が覚めてからでも……って起きてるのかい？」

身体はだるくなったが鼻も耳も視界も先程より随分クリアになった。お陰で今自分が簡素なベッドに寝かされているのも見知らぬ男女に見下ろされていることもはっきりと理解出来た

意識があることを気づかれた……
Aは咄嗟に身体を起こし2人から距離をとるように少し後ずさる。ベッドの上で膝立ちになり役に立つとは思わないが脚に掛かっていたシーツを盾にする

「落ち着け、ここは救護室だ」

「はぁ……はぁ…」

立ち上がってすぐずきりと腹部が傷んだ。どうやら肋骨は修復されたようだが完治ではないらしい
肩で息をしながら正面の黒髪に包帯のようなものを首に巻いた男と小柄な頭に注射器のようなものが刺さった妙齢な女性、2人を交互に見やる

「(誰だ……)」

記憶が曖昧。オークションの真っ只中で高値で売られたと思っていた。思い出しても身体が震える。視界が悪くなり苦しみもがいてる間にここに連れてこられている

「こりゃ気が動転してるよ…落ち着かせてやらにゃ」

「わかってます。おい、ここは救護室だ。ここはもうヒーロー側陣営だから安心しろ」

ヒーロー側陣営

その聞きなれない言葉のどこに安心しろというのだろうか。Aには分からなかった

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