【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ13)

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力任せに引きづられ張り倒され座り込む。その衝撃で肋骨がズキリと軋み呼吸が一瞬止まる。目の前に人の気配がする。１人や2人ではない…見られている。変に心臓が脈を打つ

「少々手違いがあり頬が腫れておりますがそれでも劣らぬ美しさ、さぁ！！瞬き禁止ですよ！！仮面は決して外さずご覧下さい！」

そんな声がマイクを通してきこえ、背後から伸びる手に目元の布を解かれる。そのまま顎を抑えられ動きを制限される。一気に光が降り注ぎ目が眩む。逆光で何も見えないのに正面から幾多ものざわめきと声が襲い来る

「細身の金糸の髪に透き通ったブルーサファイアの瞳！この瞳をみたらもうそこらの宝石なんて石ころも同然！」

「美しい……！」

「本当に男か？！」

そこかしこから聞こえる声目を細めて正面を見れば、仮面で顔を隠した醜い大人たちの姿。身なりのいい大半が男だろう。女も所々混じっている。金持ちの道楽、歪んだ性癖、理由は様々だろうが褒められたものではない。反吐が出る

「口元を濡らす鮮血が返って色気と美しさを際立たせているとは思いませんか？ええ、これもパフォーマンスです！どうでしょう、もっとみたいですよねぇ！！」

司会の男の言葉に100、200と声が上がる。あぁ本当に売られるのか…とどこか他人事のような諦めきったのかスーッと心が凪いでいく

「おっと、静粛に…まだスタート金額言ってませんよぉ。気が早いんだから」

得られる大金に下衆な笑いが漏れ出ている。自分にそんな高値がつくならもっと早く己で売り込めばよかったか？

「それでは、800万からスタートとさせていただきます！」

ガベルがガンガンと開始の合図を告げる

900、1100、1500とものの数秒で倍の額になる。己の価値は存外高いらしい…己で売り込んでも売られたくはない。金だけもらえたらどれほどいいか

「4800！」

ビクッ

一際声を上げた低めの男の声
逆光で何も見えない変わりに耳が神経が鋭敏になっているせいか、それとも反射的なものかその男の声はどこか底冷えのする肌が粟立つものがあった

これは、恐怖だ

「他にいませんか？」

司会の男の声にまた少し額が上がる。だがそれをすぐ上乗せして先程の男が名乗り出る

「あ、……やだ…」

男の声が父と被る

何もかもを押さえつけ全てを支配しようとする声

一気にこの競りが現実味を帯びる

「8000」

その声を最後に、辺りが静寂に包まれた

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