神野事件編 ページ45
「ふざけるのも大概にしたまえ！！」
白を基調とした室内で
飯田の声が響く
合宿施設襲撃から2日
世間では雄英高校の失態として大々的に取り上げ大きなニュースとなっていた
両腕含めボロボロの重症で病院に運ばれた緑谷は
気絶と悶絶を繰り返し高熱にうなされ
リカバリーガールたちの決死の治療により
今朝目覚めた
タイミングよく見舞いに来てくれたクラスメイトから
伝えられた現実は
気を失う前となんも変わっちゃいなかった
爆豪とシンが敵連合に連れ去られた
この事実が重く緑谷に伸し掛る
動かなかった体
目の前で届かなかった腕
助けられなかった事実
それがどうしようも不甲斐なく悔しかった
「じゃあ今度は救けよう」
だから、静かに言われたその言葉が
希望の光にも見えた
「切島の"何も出来なかった"悔しさも轟の"眼前で奪われた"悔しさもわかる」
怒りに震える飯田をそっといなし
障子は珍しくしっかり自分の意見を伝える
プロヒーローもいないあの場面で
常闇だけでも掴めたことは奇跡だった
でも、爆豪もシンも確かにすぐそこにいた
手の届くところにいたのだ
「俺だって悔しい、だがこれは感情で動いていい話ではない」
「オールマイトに任せようよ…戦闘許可は解除されてるし…」
障子の言葉に青山も続く
どんだけ言おうとも自分たちは学生である
守られる立場
勝手をしていい立場でも時でもない
救けに行きたいと望む切島と轟
それを止めたい飯田
自分たちの出る幕ではないと思う生徒たち
皆の考えが拮抗し
しん、と静寂が訪れる
コンコン…
「お話中ごめんねー」
タイミングよく、いや見計らってか緑谷の主治医が診察時間だと部屋に入ってきた
それでこの空気を壊そうと蜘蛛の子を散らすように部屋を出ていく1Aメンバー
この話は終わりにしたかった
「八百万には昨日話した…行くなら即行。今晩だ」
「！」
飯田の耳に切島の声が届く
「重症のおめーが動けるかは知らねぇ。それでも誘ってんのはおめーが1番悔しいと思うからだ」
「…シンは自分で助けてって言えねぇやつだと思う。もう遠慮するのやめる…あいつは今救けを求めてんだよ」
今晩、病院前で待つ……
その言葉が飯田に
重く、のしかかってきた
．
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作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年2月24日 16時
