【ヒロアカ】荊棘の少年4 (ページ36)

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相澤の言葉に息を飲む声が聞こえる

それ程、今この場は静まり返っていた

切島は、確かにシンの一人称は"僕"だったなと先日怒らせてしまった時のことを思い出す

芦戸も緊急時とはいえすごくナチュラルに返事が返ってきたなと、目を見開く

「じゃあ…そこにいるの……誰…？」

ぽつりと漏れ出た声は震えていた
ボロボロになっているのは演技なのだろうか
そもそも、目の前のこの人は誰なのだろうか

「バレるの早ぇな」

「「「「！！！」」」」

先も聞いた声

木の上にはツギハギだらけの男がいつの間にいたのか佇んでいた。聞こえてきた声に相澤は舌を打つ

「一人称でバレんのか…話し方までは分かんねぇわ」

「あぁもう難しい！ごめん！荼毘！いや、俺は悪くない！」

いきなりシンの姿、声で快活に話し出すものだからその場の全員の肩が跳ねる
敵と仲良く話してる姿は緊張感がまるでない

目の前の表情がコロコロ変わるシンが違和感でしかなく

その歪さがかえって不気味だった

「シン…嘘だろ…なんで……」

「切島！前出るな！」

ふらっと前に出ようとする切島をブラドが慌てて捕まえる

その気持ちは痛いほど分かる…だからこそ腹が立つ

「…シンをどこへやった」

「…さぁ、どこだろうな」

厭らしく笑う目の前の男-荼毘-

相澤が捕縛していたシンが泥となり消えたのは同時だった

「シンっ！！！」

「あーあ、消えちまった。気づかなければそのままずっと一緒にいれたのにな…なぁイレイザーヘッド」

「！！まさかっ…円場も」

敵の言葉にブラドはバッと後ろを振り返る
物間に支えられている円場は以前気を失ったまま
物間や近くにいた飯田たちにも緊張が走る

しかしそれは杞憂に終わる
余裕の表れか、荼毘はゆっくりと話し始める

「あぁ、そいつは本物だ…無傷とはいかないがちゃんと返してやったぜ。感謝しな」

「どういう事だ…」

「かわいいマリアからのお願いをきいたまでよ」

「マリア…？」

聞き慣れない名前に言葉を返すと荼毘はくつくつと腹を抱えて笑い出す

「何も知らねぇんだな…めでたいなぁ。あいつの価値をなんもわかってねぇ……！」

隙だらけの荼毘を再び捕縛布で拘束、そのまま飛び上がり背中に飛び乗り地に伏せさせる……どうせニセモノだ。無駄とわかっていながらも衝動が抑えられなかった

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