59 ページ32
「……」
抵抗する力がなくなり
気を失ったシンの首元から荼毘はそっと腕を外す
起き上がる気配もないので完全に落ちたと思って間違いないだろう
荼毘は、彼の最後の言葉を思い出していた
「…まさか敵にお願いするなんてな」
思ってたよりヒーローらしい事を言うな、と思った
馬鹿なヤツとも思うがそれ程までにあのガキを守りたかったのか、と意外に思う
聞いていた話では言われたことに無感動に動く人形のようなやつだと言うことだった。元々の性格かそう洗脳されているかはさておき荼毘が目で見て感じたシン・セドリックという少年は、外見だけ見れば人形のように小綺麗な少年だと思ったが中身は全くそんなことないむしろ……
「…雄英で感情が芽生えたか？」
同世代のガキたちとヒーローごっこしたらそうなるか
と荼毘は「かわいそうに」と思わず言葉が漏れる
相容れない2つの狭間に押し込められて
さぞ思い悩み葛藤したことだろう…
それは痛いほどわかってしまう…分かりたくはないが
己はどちらかを選んだ
それに後悔はないし
むしろスッキリして生き甲斐を感じられる程
しかし、この少年は選ぶということ自体頭にないだろう
よく見ると目の下の隈がひどかった。それがあってもなお綺麗だと男の自分でも思ってしまうのだからこれは色々厄介だと思った
他を魅了し無意識に引き付けてしまうだろう、と
「おい！何見つめてんだよ！恋か？わかるぜ！」
「分かるなよ！そんな事どうでもいいんだ！早く運ぶぞ」
「運ぶなら俺がやるっ！俺しかいねぇ！」
「いやいや、俺だよ！お前は下心がある！ダメだ！」
「お前もあるだろ！鼻の下伸びてんぞ！いや伸びてねぇ！」
「お前ら！勘違いするな！マリアちゃんは男だ！マリアくん！だ！」
「…うるせーな、1人に戻れ。トゥワイス」
下のうるささに耳を抑えたくなる。
自分が仕掛けたことだがさぞうるさかっただろうに…と軽く頬を撫でる
よっと、片腕でシンを抱きその肩に担ぎ
軽々と木から飛び降り1人になったトゥワイスの横に降り立つ
「さ、集合場所行こうぜ！ちんたらしてたら置いてかれる！いや、もうみんな置いてこーぜ！」
先にと歩き出すトゥワイスを荼毘は止める
1つ、忘れ物がある
「なんだよ、荼毘？トイレか？我慢しろ！」
「ちげーよ。お願い頼まれてるから叶えてやらなきゃ、と思ってさ」
そう言ってニヒルな笑みを向けた
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年2月24日 16時
