・ ページ43
真っ暗な世界に、それでもすぐ側に誰かがいることは分かる明るさの中
吐く息が白く見えて寒さに身体が震えた
「A寒い？」
「大丈夫」
優しい声がすぐ側で聞こえて見上げれば、綺麗な青は見えないけれど、
優しい口元がゆるく横に引かれた
五条が笑うと胸の奥があったかい
どうして暗いのに明るいのかと辺りを見回して頭上に見える丸いものに気がついた
すごく遠くにあるのにキラキラとしていてあれが光の正体なのだと気がついた
「Aは初めて見るよね、あれは月っていうんだよ」
聞いた事のある言葉であれが月かとAは思うけど、それ以上はまだ何も感じなかった
ただ、明るくて綺麗だなとは思った
しばらく進むと大きいものが行き交う場所にきて、白い線の床を歩いて人々が集まる所にきた
「まずは、鳥居の前で一礼！神様の家だからね、おじゃまします！」
「……おじゃまします？」
五条に習ってぺこりと頭を下げる
そして伸ばされた手を取り並んで歩く
冷たい水で手を洗い、人の波に並んで進んでいくと見えてきた建物に目を見開いた
「きれい」
カランカランと音がする
パチパチと音がして皆が軽く礼をする
神様にお礼とお祈りをするそうだ
「おいのり？」
「来年も良い年でありますようにってお願いするんだよ」
「したらどうなる？」
「僕とずっと一緒に入れまーす！」
「じゃあおいのり、する」
来年が何か分からないけど
ずっとがどれくらいか分からないけど
五条と一緒にいたいは分かる
鈴緒を揺らして鈴を鳴らし
見よう見まねで手を叩き目を瞑る
真っ暗闇の中、光を求めるように思いを込める
「五条とずっと、ずっといたいです」
紡がれた言葉は音となって周囲の人の耳に入る
健気な願いに思わず笑みが伝播する
五条は気恥しい気持ちがあるものの
その切なる願いに心が浄化されていく心地を感じる
一層この辺りの空気が清らかになった気もして
この清らかさをクソじじい共に見せてやりたいと思った
「…Aが汚れるからいっか」
その目に写らせるのももったいないと五条は思う
それほどまでにAは五条にとって大きな存在になった
進む道が正しいのかその正誤判断はいまだにできていない
間違いなのかもしれないけれど、Aと共に歩む今だけは間違いではないと言い切れる
「(弱者とか強者とか､術師とか非術師とかじゃない……人と生きる尊さ、これを忘れちゃあいけないよね)」
この子が生きる世界を、守らなければと神に誓う
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 388人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます！楽しみにしていただけて嬉しいです。また読みにきていただけたら更に嬉しいです(∗ˊ꒵ˋ∗) (1月22日 7時) (
レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - めっちゃ好きです！！設定とか物語すごく凝っててすごいですね！！これからどうなっていくのかすごい楽しみです！！🍌🍮 (1月21日 0時) (レス) @page10 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2024年1月19日 10時
