・ ページ36
「いたいた、A」
「!硝子、七海」
突如始まった路上での人形劇を熱心に見つめていたAは、聞き馴染みのある声に呼ばれ振り返る
「うわーすごいね。サンタだ」
「サンタ、はプレゼントくれるって」
「そうだね。明日届けてくれるよ」
鼻先を赤くして動く人形達を食い入るように見つめるAは、あれが人の手で動いてるものだなんてきっと思いもしないんだろう
「可愛い帽子だね。どうしたのそれ」
「これ、五条が誕生日って」
「ふーん。可愛いけど五条の趣味だと思うとキモイね」
「?」
「おいこら硝子。汚い言葉Aに聞かせんな…つーかキモイってなんだゴラ」
後ろでキャンキャン喚く五条を無視して硝子はそうは言っても普段の何倍も可愛く見えるAが愛おしいわけで
外を見てこんなに表情を変えるだなんてと泣きそうになるのを堪えてAをぎゅっと抱きしめる
「硝子?」
傍から見たらきっとAはつまらなそうに人形劇を見る子供なのだろう
だけど、ずっと見てきた硝子達からすれば幾分瞳に光が灯っててキラキラと輝いている
世界の眩さに心躍らせている
「寒いでしょ、鼻赤い。こうしてればあったかい」
「……うん、あったかい。硝子はあったかい」
肌を刺す寒さも心を絆すあたたかさも感じられるようになっている
後ろで男達がホットワインとドイツソーセージに舌鼓を打っている間も、硝子はAと目の前のものがたりを眺めていた
サンタがプレゼントの準備をしてソリに積んでいく
ソリを引くトナカイを探してトナカイの村に行くと一人仲間はずれにされた青い鼻のトナカイに出会う
トナカイは1人は寂しいと涙を流す
サンタは自分も1人なのだとそっと手を差し伸べる
これからたくさんの子供たちの笑顔を見に行くから一緒に行こうと
手を取り鈴を鳴らし聖なる夜を駆け定番のクリスマスソングが流れてキラキラと流れる星をイメージしたライトパフォーマンスでわっと歓声が起こる
Aからも小さく驚きの声が漏れる
出会った当初こんな表情ができるなんて思っていなかった
生きた屍のようにただそこにあるだけだった子供はもうここにはいない
大歓声と拍手に包まれサンタの人形達が礼をする姿に
周りをみてAもぎこちなさそうに手を叩く
白いモコモコの手袋がパフパフと音を鳴らす
その後も夜のクリスマスイルミネーションを堪能したAは
初めてのお出かけに力尽き五条の背で寝てしまうのであった
.
388人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただけて嬉しいです。また読みにきていただけたら更に嬉しいです(∗ˊ꒵ˋ∗) (1月22日 7時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - めっちゃ好きです!!設定とか物語すごく凝っててすごいですね!!これからどうなっていくのかすごい楽しみです!!🍌🍮 (1月21日 0時) (レス) @page10 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みけいぬこ | 作成日時:2024年1月19日 10時