2015.8.7 ページ29
「夜蛾、これは何?」
「すいかだ。夏の風物詩だ。種は食うなよ。皿にペッてしなさい」
「Aこうやるんだー」
「わかった」
夏の陽射しが眩しい外の世界だが、Aのいる空間は変わらず橙色の淡い灯り
変わり映えのしない風景
しかし、それしか知らないAはその事に違和感も疑問も抱きはしない
「プール行きてえな」
『パンダ泳げる?』
「馬鹿言え、浮き輪使うに決まってんだろ」
「プール?」
「知らないのか?でっかい水たまりだ!最近暑いからな、入ると気持ちいいんだ」
しゃりとスイカを一口齧り、Aは見たことないプールを想像してか上を見上げる
何を思い描いてるのかは分からないが、パンダの言葉だけで想像できるものはたかが知れてる
「お風呂じゃだめ?」
「水風呂にしたらいいな!」
『風邪ひく!Aはダメ』
「過保護だな、ピーティ」
『A守ル』
「過保護だな」
プールがどんなものか、見せてあげたいと思う親心がないわけではないがこれからの時期は特に呪いが湧きやすくなる
お盆が近づき、人が故人に思いを馳せる時期であり、いい思い出とともに悲しい記憶や負の感情も思い起こされる時期だ
不慮な事故や突然の病気の悪化、はたまた殺人そう言った思いもよらない事件で別れる事になった遺族は大勢いる
だから、特にこの時期は呪いが湧きやすい
“空の器“のAはその呪力を受け入れてしまうから念のためにここの強固結界を貼り直しを行った
「もうすぐ花火大会もあるぞ、Aは行かないのか?」
「はなび、たいかい?」
『Aは行かなィ』
「夜の空に炎の花がたくさん咲くんだ。ちょーキレイだぞ」
『行かなィ』
3人の会話を聞きながら夜蛾はシャクリとすいかを一口
特有の甘さが口内を満たす
その甘さを少し夜蛾は後悔した
「じゃあ秋になったらさつまいも掘りにいこう。落ち葉燃やして焼き芋作ろう」
『危ないからダメ』
「…お前、今にAに嫌われるぞ。うざいって」
『!A、キライ?』
「…きらいじゃないよ?」
『!!(ドヤァ)』
「…よかったな。Aが優しくて。俺だったら嫌いになるわ」
見せられもしない四季を、Aにチラつかせる
ここにいる限りAには変化なんてない
色も 旬もこのまま知らぬまま生きていくことになるのだろうか
「…」
それが正しいことなのか、と夜蛾は自問する
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みけいぬこ(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただけて嬉しいです。また読みにきていただけたら更に嬉しいです(∗ˊ꒵ˋ∗) (1月22日 7時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - めっちゃ好きです!!設定とか物語すごく凝っててすごいですね!!これからどうなっていくのかすごい楽しみです!!🍌🍮 (1月21日 0時) (レス) @page10 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みけいぬこ | 作成日時:2024年1月19日 10時