2015.5.5 ページ27
「七海、Aの調子はどうだ」
「物覚えはとても良いです。自発的な会話はぎこちないですが、受け答えは大分スムーズになりました」
結界空間の薄暗い室内で七海と夜蛾は少し先に目を向ける
『お前、ダレ』
「俺パンダ。お前は?」
『ピーティ』
「お前、は…A」
「Aとピーティな。よろしく」
名前の通りのパンダはピーティと同じくらいの大きさでぽてっとした手をそっと差し出した。ピーティはAを取られまいと両腕の蔓を限界まで伸ばして大きく見せAとパンダの間に立っていた
「俺何もしないぞ?握手しよう」
『しなィ』
「なんでだよ」
『Aは、あげない』
「?欲しいなんて言ってないぞ」
「握手、しよう」
無表情でそう呟くAだが、パンダに手を伸ばすことはなくただじっと見つめるだけ。それに握手の仕方を教えようとパンダがAの手を取り、それが嫌でピーティがパンダの頬を蔓の1本で叩いて喧嘩が始まった
「…まだ学ぶことはたくさんあります」
「そのようだな」
殴り合いをしてる呪骸2人を目の前にしてもAの表情に変化は見られない。ただ、その様子を眺めているだけで何を考えているかは全く分からない
「…感情がないわけではありません。多くに疑問をもち今までの当たり前との差異に混乱しているんだと思います」
七海が日々言葉を教える中で如実にAが反応するのは“恐怖“と“怒り“だ
桃太郎の絵本を読み聞かせると、鬼の絵が出てくるとAは指を指す
3びきのこぶたの絵本を読み聞かせると、泣いているぶた達を見ると指を指す
最初はそれ以降のアクションはなかったのだが最近七海はその意味を理解した
「彼の世界には彼に恐怖する人間と彼とそのそばに居た姑獲鳥葛に怒りを向ける人間しかいなかった。だからそんな表情やそれに付随する言葉しか知らない。それをしない我々を不思議に思ってるんです」
「怖がる理由がないからな」
「呪霊の存在もAの力も理解した者は彼にそう言った感情を向けることはない…まぁ一部を除いてですが」
「一般的とは少し違うがこれからこの常識になれてもらわなければな」
『お前、キライ』
「喜べ俺もだ」
「…」
互いに肩で息をするパンダとピーティ
それをいつまでも眺めるAの瞳はまだ光が灯っていない
そこに光が灯るのはいつになるのだろうか
「たっだいま〜あれ?学長いたの?」
外界との唯一の出入口である扉が勢いよく開かれ五条が入ってきた
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みけいぬこ(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただけて嬉しいです。また読みにきていただけたら更に嬉しいです(∗ˊ꒵ˋ∗) (1月22日 7時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - めっちゃ好きです!!設定とか物語すごく凝っててすごいですね!!これからどうなっていくのかすごい楽しみです!!🍌🍮 (1月21日 0時) (レス) @page10 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みけいぬこ | 作成日時:2024年1月19日 10時