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「この7年間、この子はどうやって制御していたんだ」
「反転術式でも追いつかない…今この瞬間にも周囲の呪力を吸収してるみたい」
「周囲にも普段より呪霊が沸いているみたいですよ。この子に引き寄せられてるのは明らかですね」
集まった夜蛾、七海、そして家入がそれぞれ状況を確認しあう
それを横目に耳も稼働しながら五条は横たわる小さな存在に意識を向ける
硝子の術式に包まれ頬を赤く染め苦しそうな様子の子供は死を望んだ本人とは思えない程に抗ってるように見えた
眉を顰める様は必死に今を生きようともがいてるようでその矛盾に少し困惑した
「……ぃ、五条聞いてるのか」
「へぃ?!…あぁ、何聞いてますよそれでいいんじゃないですか」
「五条さん。それも何もこちらは提案はしてません」
「話聞いてなかったな」
「……」
長年の付き合いだ
派手に剃りこみを入れサングラスに屈強な図体
傍目から見たらカタギの人間には到底思えない風体の夜蛾を怖いとは微塵も思わない
だが、散々言いくるめられどんなに不遜な態度を取ってきても諦めない
すみませんと言う口は持ち合わせていないのでバツが悪そうにそっぽを向く
それに溜め息が返ってくるのだがそんなのは日常風景だ
「もう一度言う、屋敷にいる間この子の呪力の制御で思い当たる事はなかったか?」
「……」
そう問われて真っ先に思い浮かぶものがある
しかし、それを言ったところでそれに頼る事は不可能だ
あれが制御していたという確証もない
「はぁはぁ……はぁ…」
相変わらず肌を刺すような強大な呪力を感じる
このまま放っておけばどうなるかは予想がつく
「……今はもう何もない。この子に引き寄せられる呪力を祓い続けるしか」
「……上からはこの子供の抹殺命令が出た。制御できない力は害にしかならないとの判断だ」
「チッ」
夜蛾の言葉に間髪入れずに舌打ちがこぼれた
何のために殺さずに連れ帰ったと思っているのだろうか
子供の願いを反故にしてまで生かしたのは、人の手で死を与えるためではない
生きる事の尊さを教えるためだ
清々しくどうしようもなく愛おしい世界を見せるためだ
この子の瞳に光を灯してやると決めたから
「とりあえず全部祓ってくる。硝子、絶対殺すな」
「……言われなくても」
ズンズンと大股で部屋を出ていく五条を止めるものは誰もいない
ただ、さっきとは違うため息が3つ五条の耳を揺らしただけだった
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みけいぬこ(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただけて嬉しいです。また読みにきていただけたら更に嬉しいです(∗ˊ꒵ˋ∗) (1月22日 7時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - めっちゃ好きです!!設定とか物語すごく凝っててすごいですね!!これからどうなっていくのかすごい楽しみです!!🍌🍮 (1月21日 0時) (レス) @page10 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みけいぬこ | 作成日時:2024年1月19日 10時