5 ページ16
あの頃より少しは変われたと思ってた
変わって、そして少しは強くなったと思ってた
次に出会う日が来たとしても少しくらい立ち向かえるのではないかと
＿＿A…
「っ……全然…変わってない…」
たった一言
名を呼ぶその声を聞いた瞬間
世界からそれ以外の音が消えた
賑わいを見せていた境内の人混みも屋台の呼び声も
何もかもAの世界から消え失せて
ヴィクトリアただ一人に意識が向けられた
＿＿今度はあいつに助けを求めたの？じゃあ殺してもいいよね？
「A、大丈……」
パシ
「…っあ…」
かけられた声と近づいてきた気配を咄嗟に叩き落としてしまった
乾いた音は塚内の手を叩いた音で
いつの間にか車は車庫に停められ月明かりも外の人工灯も遮られた空間に
その暗闇と閉塞感に寒気がした
ここはAが脳裏に思い描く場所ではないのに身体が震える
「(謝らなきゃ……でも、何に…早く…)」
落ち着けと冷静に対処しようとする自分と、それを横目に落ち着けずどんどん焦り混乱する自分がいる。そのどちらもみてまた別の自分が落ち着けと出てきて何に落ち着けばいいんだと叫びたくなる衝動を必死に抑え込む
抜け出すことのできない混沌がただただ怖くて蹲る
＿＿A、大丈夫。ここは私達の家だよ
「っ……い、え……？」
聴こえてきた声は直接脳に語りかける様なもので聞き慣れない言葉を思わず反芻する
＿＿さっき紅白を一緒に観て年越しそばを食べたね、これから初夢をみよう
「はつ、ゆめ……」
「一富士二鷹三茄子」
「……？な、に…」
聞き慣れない単語に思わず声の主を目で探す。その人はすぐそばにいて柔らかい、優しい笑みを浮かべてAを見つめていた
「ぁ……お父さ…ん」
「一富士二鷹三茄子」
「？……それ、何…」
よく分からないその単語に何故か心が落ち着いていく
どういう漢字変換なのか、何を意味しているのかそれを理解しようとそちらに意識が向いてそこでようやく深く息を吸うことが出来た
「初夢に見ると縁起が良いとされるものを表すことわざだよ。1は富士山、二は鳥の鷹、三は野菜の茄子」
「……ふふっ…それをみてどう縁起が良いの？変なの…なすって…」
さっきまで身体中を這っていた恐怖が霧散していく
それが嬉しくてAは笑いながら目尻に涙を浮かべた
ほろりほろりと笑う度にそれは零れ頬を伝った
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - どなるどさん» コメントありがとうございますっいただいた応援にこたえます୧( "̮ )୨✧︎ (3月14日 16時) (
レス) @page49 id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
どなるど - どの作品も大好きなんですが、この作品はその中でもとくに大大大好きな作品です！！続き気長にまってます🎶応援してます！❤️🔥 (3月13日 21時) (レス) id: 6d4f03cb94 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - ラーメンさん» 2回目コメントありがとうございます！今は平穏な記憶をたくさん作っています( * ॑꒳ ॑*)これからが大変なので…頑張っていきますね (11月7日 21時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
ラーメン(プロフ) - 更新お疲れ様です！みんな可愛すぎてもうなんかやばいです。これからも愛読させていただきます！ (11月7日 17時) (レス) id: 79a6e04b38 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - ラーメンさん» コメントありがとうございます！嬉しい：-：無理せず更新してきます！読んでくださってありがとうございますっ (10月5日 21時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2023年8月28日 13時
