11 ページ11
「メリークリスマス…」
数日前に皆で叫んだそれを一人呟いてみる。そうすると瞼の裏にあの日のカラフルで賑やかな光景が甦ってくる
自室のベッドに仰向けになり天井の染みを探す
築数ヶ月だからそんなもの見つからなかった
「楽しかった、な…」
そんなことはどうでもよくて
Aの瞳には天井は映っていない
見ているのはあの日のみんなの笑った顔や砂藤が作った特大クリスマスケーキや初めてやったクリスマス交換会だった
テーブルの上にはちょこんと愛らしいぬいぐるみが鎮座している。ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいた葉隠を思い出してクスリと笑みがもれた
たくさん食べて、たくさん笑った
一生分のそれをあの日にしてしまったのではないかと思ったのだが
『また来年も一緒にやろーね！』
そう言って笑顔を向けてくれた芦戸の言葉は嘘では無いと思ってる
それに、嘘にしたくないとAは思っている
「また来年…」
未来の約束が胸を熱くさせる
今日は12/31
日本では大晦日と呼ぶらしい。聞き覚えのないその単語、だけどどこか懐かしいような気もするちぐはぐさが少し恨めしい
未来の約束が増え、日々が穏やかで充実したものであるからこそ
過去が真っ暗であることが後ろめたく感じる
忘れてしまった記憶を取り戻したい
あの人の呪縛から解き放たれたい
自分が本当に"悟竹A"であると
コンコン
「A、来たぞ」
ドア越しに相澤の声が聞こえて身体を起こす。
もう他の生徒は各自帰路についていて残っていたのはAだけだ。静まり返った寮はどこか寂しくて、一人がこんなにも心細いことを痛感した
ガチャリと音を立てて扉を開ければ穏やかな表情の相澤
「ちゃんと甘えてこい。明日の昼頃、迎えに行く」
全寮制化の経緯から生徒は一日だけ我が家に帰れる事になった。プロヒーローの護衛つきではあるが。
Aも漏れず帰宅が許された。家族となった塚内の元に
敵連合の事で忙しい塚内もオールマイト他諸々の計らいで一日の休暇を得られたのだ。親子水入らずで年を越す
中々に、2人で過ごす時間が作れていないから相澤は"甘えてこい"とあえて言葉にした
「！？甘っ…」
顔を真っ赤にさせて俯く姿は想定内
くしゃりと頭を撫でて相澤は先導するように歩き出した
「学校の外行く前にヘッドホンつけとけよ」
「…はい」
少し不貞腐れたような返事に相澤は笑いを押し殺した
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - どなるどさん» コメントありがとうございますっいただいた応援にこたえます୧( "̮ )୨✧︎ (3月14日 16時) (
レス) @page49 id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
どなるど - どの作品も大好きなんですが、この作品はその中でもとくに大大大好きな作品です！！続き気長にまってます🎶応援してます！❤️🔥 (3月13日 21時) (レス) id: 6d4f03cb94 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - ラーメンさん» 2回目コメントありがとうございます！今は平穏な記憶をたくさん作っています( * ॑꒳ ॑*)これからが大変なので…頑張っていきますね (11月7日 21時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
ラーメン(プロフ) - 更新お疲れ様です！みんな可愛すぎてもうなんかやばいです。これからも愛読させていただきます！ (11月7日 17時) (レス) id: 79a6e04b38 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - ラーメンさん» コメントありがとうございます！嬉しい：-：無理せず更新してきます！読んでくださってありがとうございますっ (10月5日 21時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2023年8月28日 13時
