【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht Ⅸ (ページ5)

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綺麗だと思っていた宝石の様な瞳から雫が零れる

眉根を寄せ辛そうなその表情をしてほしくないのに

目の前の光景が綺麗だと、その涙までもがまるで芸術のようで見惚れる

紡がれる言葉はAの想い

なんで言ってくれなかったんだ

なんて自分本位な投げかけが馬鹿みたいに思えるほど

その想いは自分のことを思ってくれていて

そしてあの日の行動がAの力になれていたのだと痛感する

救けられなかった後悔からの執着だった

見捨てたことへの負い目でありよく言えばヒーローとして

悪く言えば心に残るもやもやをなくしたかったから

始まりは汚かったかもしれない

だけどAを救いたかったのは本当で

Aの救いになりたいと思ったのも本当で

その証明は求めるものではないと理解しているから

ずっとそうだといいなという希望の延長の中だった

「A……」

「あの日、周りの人間全員が怖かった…この世界に味方なんて一人もいなくて救われることもない世界にもういたくなかった…死にたかったんだ」

「っ」

「その時に焦凍が、来てくれたんだ…俺に視せてくれたんだよ」

流れる涙は何故かキラキラ輝いているようで

その言葉一つ一つが胸を締めつける

「焦凍だから俺は信じられた、焦凍だからその手を取った……でも、ごめんっ…俺、しょ、との言葉…忘れちゃった…っ」

眉間に皺がよってくしゃりとAの顔が歪む

それは焦凍の問いの答えだった

「今まで、小さい頃の記憶、とか…俺が経験した嫌な出来事とかの記憶が消えてて、漠然とした恐怖だけ覚えてて気持ち悪かったけど別に良かった……でも、」

そういって、Aは腕にそっと触れ焦凍の胸元に寄りかかる

その肩は震えていた

「焦凍に…とても大切な言葉をもらった……それを忘れて…心にぽっかり穴が空いたみたいで……苦しいんだッ…」

そう言ってAはごめんと呟いた

なんで責めるみたいな言い方をしたのかと少し前の自分に後悔した

個性のデメリットを言わなかったのは

自分を傷つけないためというAの優しさだった

思い出を忘れ漠然とした感情だけが残ることは

どれほど恐ろしいことだろうか

そんなちぐはぐの中笑顔を向けていてくれた

それがとてももどかしくて、愛おしい

「俺、皆の役にたちたいよ…沢山の人の人生狂わせて傷つけた俺だけどッ…ここに、いたい……その為なら何でも…」

「いいんだ」

沢山傷つけたのは己も同じだ

だけど、その分だけお前に伝える言葉は

ちゃんと俺の記憶の中にある

．