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ぽつりと独り言のように零れた耳郎の声は思いのほかよく響いて、それが悲しみだけを含んだものではない事に気づいて皆の視線は自然と彼女に向いた。視線を感じてか無意識か、個性だろう耳たぶのジャックのようなものをくるりくるりと指で少し弄ると両手を背中に組んで胸を張る様に前を向いた
「あれだね、なんかあれ。同列に言っちゃうのもおかしな話だけど」
そこで一旦言葉を区切ると器用に上鳴、常闇、八百万そして爆豪を自分の近くに引き寄せる。上鳴が怖いと声を漏らすから打ち合わせされたものでない事を察する
「…あれ、このメンバーって」
「耳郎」
記憶に新しいその人選にAはキラキラとした大舞台が脳裏を過ぎる。初めて訪れた雄英高校、初めて見たライブ、初めて感じたあの興奮
「ウチら不安視してた人たちがいてさみんなに安心してほしくて笑ってほしくてさ」
懐かしむ様に柔らかい耳郎の声はその時間を慈しむようで
あの数時間にそんな思いがあって不安要素も合ったのかと思う
「やれる事考えてさ、
けどAが見た景色はみんな同じ方向を見てみんなが笑顔でとても楽しそうな素敵な空間だった
耳郎の無邪気な笑顔を見れば分かる。あの空間は想いが形になって誰かを幸せにできたものだって
音楽やダンスという形で想いを届けてくれたと
「…伝わったよ。あれがきっかけで俺はここが安心できるところだって思えた。楽しかった」
「A…！うん！ウチら出来たじゃんね！」
「そうだな…」
Aの言葉を受けて一層嬉しそうにくしゃりと笑う耳郎
隣に来た轟も嬉しそうに少し笑ってくしゃりとAの髪を撫ぜる
「取り戻すだけじゃなくて、前よりもっとよくなるように皆で行こうよ」
「Aも一緒に！」
「え、俺、も…？」
「Aの今くれた感想がウチらの結果に対する答え！そこまでで簡潔だよ！やりっぱなしじゃだめ」
「耳郎さんの言う通りですわ。届けたい側の言葉は大切にしなければ」
「A組の一番の味方で守る側の代表って事で！」
「スケール大きい…俺でいいの…？」
「Aだから、いいんだろ」
上鳴に囃子立てられ気恥しいような恐れ多いような
けれどそれに反論する人は誰もいなくて、極めつけに焦凍に優しい笑みで見つめられれば認めるしかなくてこくりと黙ってひとつ頷いた
「俺、ずっと見てるから」
「あぁ、そうしてくれ」
乗り越えることは山積みだけど、目指す先が明るい未来ならついていこう
どこまでも……
fin
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作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2023年3月1日 15時
