【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht Ⅸ (ページ32)

今日:17 hit、昨日:29 hit、合計:19,700 hit

8 ページ32

「A少年はこっちにいたんだな…元気そうでよかった」

「あ、もうAも連れ回さないでヨネ！Aに関しては私たちより轟の方が怖いんだからー！」

「承知しているよ、しないと約束しよう…それより轟少年はそんなに怖いのかい？」

「氷結で一発！」

「次は火炙りもありえる」

「えぇ！？」

もう既に制裁を受けた人がいるのか芦戸や常闇の言葉にオールマイトは背筋が震えた

＿＿…

「オールマイト来てたんだ、気づかなかった…」

オールマイトと分かれようやく談話室の扉をくぐると変わらずソファに座ってる緑谷はその体を弛緩させ遠目からでも寝入ってるのが見て取れた。焦凍の言った通りになったなと思いつつ周りの意識が緑谷から焦凍に移ってるのをなんとなく肌で感じる

「荼毘の兄弟、エンデヴァーの息子、内心では俺の存在もきっと不安だろう」

「…焦凍」

普段聞かない、彼の弱々しい声

胸の内に隠していた本音を聞いてズクリとAの胸が痛んだ。名を呼べば静かだった室内ではよく通り皆の視線がAにむく

「A、ありがとう」

弱音を吐いていたにしては落ち着いた普段と変わらぬ様子。でも、無理をしているようには感じない

そっと毛布を下から掬うように引き取られそのまま元いた場所に戻りAが持ってきたそれを優しく緑谷にかけてあげる

「家庭事情で、悔しいよな…轟が何かしたわけじゃねぇのに。ヒーローとしてちゃんとしてるのに、な！A！」

「う、うん」

切島の声に話の全容は分からなくても言わんとしてることは理解できるので同意を返す。何が発端でこの話になったのかは分からないけど、轟家の話というのは察した

「したよ…血にとらわれて原点を見失った」

過去は変えられない
それを焦凍の記憶から消してあげたとしても事実は消えない
でも、ヒーローである事実もまた同じで

早く、1人でも多くそれを思い出してもらえるといい

「でも、今は違うから。違うって証明する。皆に安心してもらえるように」

普段と変わらないのは決意がしっかりあるから

Aの知る轟焦凍という人間は

ずっとずっと、かっこいい

焦凍の決意を言葉で聞けてAの心が深くあたたかくなる
まっすぐ見つめてくる優しい瞳が愛おしいと感じた

「…漢だよ…おめえは！！俺何だか涙が出てくるよ…」

「避難してる人たち全員が全員見方が変わったわけでもない…か」

.