【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht Ⅸ (ページ26)

今日:4 hit、昨日:18 hit、合計:19,705 hit

2 ページ26

「変われよ」

「ざぱぁ」

着替えを取ってくると一人先に脱衣場に足を踏み入れたAは再び聞こえた水飛沫の音と水気を含んだ人の声に曇りガラスの扉をぼんやり見つめる。10人くらい入っても余裕そうな広い脱衣場の向こうは同じような広さなのか声が大分反響して聞こえる

「声は…砂藤と誰だろ？ざぱぁって言った」

シルエットだけちらちらと見えるものの誰が誰かまでは分からないものだなぁと思いながら足元に転がった真っ黒い物体をふと見つけた

「これ、緑谷の…？本当に黒…」

恐ろしくて臭いを嗅ぐことはしないが薄ら暗黒な何かが漂ってるような気もして恐ろしくて早々に目を背けた。壁は扉のない荷物おきのような造りになっていてそれぞれに服が投げ込まれている

「皆のヒーロースーツ…性格でるなぁ……あ、爆豪ちゃんと畳んでる…ん？何だこの歯車みたいなの…あぁ切島の肩のかな？転がってる。なくすぞ？」

ヒーロースーツ一つ一つどれもみんなどこかしらが汚れ擦り切れてしっかり使い込まれてる感じがする。今日まで共に鍛錬してたくさん経験した結果なだろうなと思うと自分のものではないのにどこか誇らしく、嬉しく思う

わーわーぎゃーぎゃー普通の子供のようにはしゃいでるのに頼もしい側面もあるかっこいい人達。そんな人達がいる場所に自分がいれること、複数の、それも男の人が集うこんな場所に自分が平気でいれることに今度はまた違った誇らしさで口元が緩む

「なんか、いいな…」

警戒も不安も何もなくAは自然に借り物の服を畳んで棚に入れ上の服を脱ごうと手をかけ背中が露わに…

「あぁ、いいな…」

「！？」

空間に1人だと思っていた所に聞こえた声にピタ、と動きが止まった

「白磁の滑らかな肌ってこれなんだろうなぁ…はぁはぁ来る時いたからここ来んじゃねぇかって待ってたんだよぉ」

ねっとりとまとわりつくような声が背中を撫でる

ドクリと心臓が嫌な音を立てた

ふいに焦凍の怪訝そうな言葉を思い出した

＿＿…峰田もいるのか

「男同士ならセクハラにはカウントされねぇよな…ダメだとわかっててもこういう機会をオイラずっっと待ってたんだ…！」

耳に伝わる言葉の意味を理解したくはなかった

露わになっている背中が異様に寒い

そこをゾワゾワと何かが這い上がってくる感覚が気持ち悪い

じわじわと近づいてくる気配を感じる

だけど、Aは振り向くのを躊躇う

暑くないのに、頬に汗が伝った

.