【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht Ⅸ (ページ21)

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「ひっく……うぅ…ひっく」

「……」

聞き覚えのある声の主がすすり泣く声を背に

混乱の収束と少しの分ちあいが叶った広場の喧騒を前に

どちらにも動けないと感じているエンデヴァーはその場に固まった

緑谷を労う柔らかな声と

泣くAをあやす優しげな声を漏らす息子の声

そんな優しい声を出せるのだな…と心震えるもののそれを表には出せなかった

「親父」

「……」

そんな優しげな息子から平素の声色で名を呼ばれ、ちらりと横目で見遣ればいつも通りの真っ直ぐな瞳とかち合い、その手が存外優しくAを支えてるのを見る
妻である冷に、自分はそう優しく手を差し伸べたことはあっただろうかとふと思った

「一緒に、だ」

何が、何をそんな野暮なこと聞かなくてもそれが何を意味してるのかは察する

脳裏に浮かぶは怪しげに微笑む長兄の変わり果てた姿

「あぁ……」

歯切れ悪くそう返して目も合わせられず情けない返事でも焦凍は納得してくれたのかはたまた優先がこちらではないのか少しの間視線を感じたもののAに声をかけ足音が遠のいていく

「(あぁ、謝れなかったな)」

道具のように使い悪戯に連れ出してしまったことの謝罪をまだきちんとしていなかった。その名残惜しさにようやっと振り返ったものの2人の影はもう既に見えなくなっていた

「随分お熱かったんデスけど、もう公認なんですか？」

「は！？こ、公認……！！？」

連日連夜緊迫した日が続いて見慣れていた真剣なホークスから一変、出会った頃のような人を小馬鹿にしたような癇に障る笑みを携えたホークスがエンデヴァーの脇を小突いてくる。つい数分前までの子供のような嬉しそうな横顔や年相応の真剣な表情はどこへやったと怒鳴り散らしてやりたが如何せんここでそんな事してしまえば悪目立ちするし顰蹙も買いかねん

何より動揺を悟られれば楽しませるだけだろうとひとつ嘆息をこぼし冷静さを装う。それすらを見抜かれてることを分かっててもそうするしか他にない

「馬鹿なこと言ってないで、俺達も移動するぞ」

「えー、俺そんなおかしなこと言ってます？Ｎｏ．2と3には隠そうとしてた家族会議の場に同行させて彼の保護当初から甲斐甲斐しく世話をやいてる焦凍くんはヒーローの域を超えてるとは思いますけど」

「……」

「普段なら“威厳を示せ！“とか“立場を弁えろ“とか言って口うるさく引き離そうとしそうなのに、なぁんかエンデヴァーさんもAくんには甘いッスよね？」

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