【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht Ⅸ (ページ14)

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カチカチカチ…と時計が秒を刻む、音がする

「(皆、緑谷に会えたかな…)」

全員が同じ決意の元、校長室を出てったのが数時間前のこと

強い光を纏った焦凍達の背を見送ったAは、そのまま校長室に待機していた

「Aくん、紅茶のおかわりはいるかな？」

「あ、はい。いただきます」

普通のより少し小ぶりなカップを手に取れば楽しそうにテーブルの上をてとてと歩いてきた根津が紅茶を注いでくれる。アールグレイと呼ばれる琥珀色の紅茶は程よい温かさと心落ち着く香りがした

「彼らなら大丈夫さ！彼らにとって大変なのはこの後だからね。今はのんびり待っていればいい」

「大変なのは、この後…」

優雅にカップを傾げ紅茶を飲む根津

その言葉の意味が分からないほど現状を理解してない訳ではない
エンデヴァーが懸念し言い淀んでいたこと

Aが誤解されている死柄木が探している子供というのは緑谷のことだ

「…」

そんな危険人物が避難所にきたら避難している人達はどう思うだろうか
ヒーローを、不信に思ってる人達は緑谷の存在を歓迎してくれるのだろうか

「今、何を考えてるんだい？」

カリカリカリと勢いよくクッキーを食べていた根津がそう言葉を投げかける
何を考えていたか、聞いているようで把握していると言っているようなそれにAはただ、まっすぐに揺れる瞳を根津に向ける

「君一人の言葉で沈静化できる事ならきっとああもエンデヴァーは苦しんでいないだろうね」

「…です、よね。エンデヴァーさんは、ずっと気を張って…必死で立って頑張ってます…」

「必死、そうだね。彼がああ言う形の必死さを出すことは今までになかった」

「…エンデヴァーさん、ずっと苦しそうです」

「ヒーローなんだから当然だと、君は思わないのかい？」

その問いかけにAは首を傾げる

理解できるけれど、意味は分からなかった

「？ヒーローも、戦えば疲弊しますし、責められれば心が痛くなります。この状況で苦しんでないヒーローは一人もいない、と思ってます」

「…君は、とてもいい目を持ってるね」

目を細めてAを見る根津はどこか嬉しそうだった

それがよく分からなくて答えを求めて根津を見る

「君が見た緑谷くんはどうだった？」

「どう…？」

「君の目に、彼はどう映ったか教えてくれないか？」

話の意図が読めないが、それを説明する気はなさそうだった

ならこの話の流れに従うしかないだろうとAは脳裏に緑谷を思い出す

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