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《早よ、早よ、早よ》
「…今、向かってるから…すごい急かしてくるな」
1次を通過し肩のターゲットから控室に移動しろと伝えられて雪那を連れて歩いていたAは、鳴り止まない早よコールに少しうんざりしていた。せめて下の方のターゲットが喋ってくれればいいのに肩のターゲットが喋るものだから少し耳が痛い
「おっ！氷叢来た！おつかれーっ！」
控室の入口には円場が大きく手を振って待っていてくれその言葉を受けてか小森や取陰、宍田や鱗が顔を出す
「フォローありがとねー。おかげで通過できたよん」
「いや、取陰の個性なら1人でもこっそりターゲット当てれるかなとは思ったけど。役に立ててよかったよ」
「最後まで残っててありがとうな！おかげで全員通過だ」
「私も鼻が利きますが興奮状態ですとフォローはまだ難しく無理をさせて申し訳ない」
「宍田、無理とかしてないから」
労いの言葉がどこか照れくさくてくすぐったい
A自身そこまで無理をしたと思われるようなことはしてないのだ。周りを観察し味方のちょっとの不利を潰し立ち回っていただけで、自分のターゲットも沢山引き連れてきてくれたおかげですぐに見つけて合格出来たのだから
「氷叢おつかれ！ターゲット外すの奥のキーでできるからこっちおいで。それうるさいだろ」
「拳藤、うん。うるさい…背中2もあるからやってもらえると助かる」
「おっけ」
みんなのおかげ、そう言葉にしようとしたら拳藤に呼ばれ周りにも外してこいと言われ背を押されるので控室の奥、手招きする拳藤の元に向かう。中は簡易的な食事スペースのようになっており、いくつかのテーブルとドリンクスタンド、軽食まで用意されていた。スンッと鼻を鳴らせばサンドイッチの匂いがする
「…まだ、臭うな…」
「ん？何か言ったか？」
サンドイッチの香りと共にここに来てからずっと感じている臭いもAの鼻で捉えることが出来る。むしろ、さっきより濃く近くなっているのだ
「…ここに来てからずっと獣臭みたいなのが凄くて、正直臭い」
「獣臭？」
ターゲットを外す手はそのままに拳藤はAの言葉を受けてスンスンと鼻を鳴らせて確認をする。数回首を振って辺りを嗅ぐ動作をしたがその目に浮かぶのはよく分からないと言ったものだった
「悪い、氷叢。あたしには何も臭わない。宍田は？」
「そう言えば、さっきビーストモードの時臭かった気もしますな。今は言われてみればという感じですな」
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作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2023年2月2日 14時
