【ヒロアカ】平和とはなにか3 (ページ21)

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＿＿やーいやーい、獣の子！

＿＿耳と尻尾生やして気持ち悪ぃんだよ！

＿＿獣なら動物園にいろよ！

人は、異質を嫌う

それは個性社会になってもさほど変わらなくて

雪豹の耳と尻尾を生やしたAは

幼稚園、小学校の頃はよくそう言ってからかわれていた

誰かと遊んだ記憶もない

耳や尻尾おもちゃだ飾りだと笑われ引っ張られた事もある

母は獣の姿そのものだったからそれも弄る対象だった

『A、貴方の歯や爪は他の人より少しだけ鋭いの。それをお友達に向けてはいけないよ。強さをもつ者は無闇にそれを行使してはいけない。争いは何も生まないから』

母の言葉だ

耳を掴まれたら痛いし、踏まれたら涙が出る

だけど悲しい気持ちにはなれどそれ以上何も生まない

反撃したとして関係は良くなるだろうか

言い返したとして己に獣の耳と尻尾がある事実は変わらない

＿＿こっち来んなよ！気持ち悪ぃな！

近寄ってほしくないのか

じゃあ近づかないようにしよう

＿＿前歩いてんじゃねえよ！尻尾邪魔なんだよ！

迷惑になるのか、じゃあ皆がいなくなったら帰ろう

邪魔にならないように

迷惑にならないように

怖がられないように

幼い頃のAはなるべく口を開かず

動かず心を無にして目立たないように過ごしていた

家で父と特訓の日々

その中で個性の使い方、力の使い方を学ぶにつれて

その強さを肌で感じて

人に向けてはいけないのだろうとも学んでいた

人は、自分達と違うものを恐れ排除しようとするから

自分が誰かを傷つけたら

同じ個性を持つ無実な母にまで迷惑がかかるから

優しい母とその母の大切な強い父

Aの世界はこの2人だった

『お前がエンデヴァーを越えてくれれば私の心は晴れるんだ！氷叢を道具にし冷を子を生む奴隷くらいにしか思ってないあいつに…っあいつが炎だけで勝ち上がれないと思っていた道をお前が駆け上がってくれれば…！！』

父様の泣き苦しむその姿をもう見たくない

そのお顔はとても怖いから

母様が悲しげに俯いてしまうから

『ぼくが、エンデヴァーをこえたらとうさまはよろこんでくれる。ヒーローになればつよくてもみんなゆるしてくれる』

強さを表に出しても卑下されない世界

後ろ指さされ嗤われない世界がそこにある

＿＿貴方の望むことをしていいのよ、A

己の望み

それは何だっただろう

望みとは何なのだろう

．