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深く頭を下げつつ、ブラドはちらりと正面を盗み見る
A組程ではないが己の受け持つ生徒達にこの話をするのは骨が折れる。B組の生徒の多くは毒霧で意識不明の重体者がいたほどだ。何人かの親からは全寮制を渋る声、不安の声をもらいながらもなんとか全員首を縦に振ってくれた
ここが1番の難所、だと思っていた
「全寮制導入、別に構いません」
「…！」
和装に静かな何も映していないような瞳
厳粛そうな人
と言えば聞こえはいいが心がないようなどこか冷たい感じのする氷叢家当主、氷叢の父親はそう答えた
「え、ほんと、うですか…」
「はい、それが貴方方の信頼回復のための手段でありより強固な形であるなら否を唱える理由はありません。私の求めることはただ一つ、Aをしっかり鍛えていただけるのであれば、です」
「……」
そう言われちらりと今度は堂々と視線をAに向ける
病室であった時よりも少し疲れているような窶れたような姿のAは、どこか空を見ていた
「名も無き三下の敵にやられるなど二度とあっては困るのです。この子はエンデヴァーを越える存在になる。どんな炎にも屈しない氷使いに。生ぬるい指導はこの子の未来の妨げになります。勝ち上がっていくための力を、オールマイトのような誰もが認める結果を私は望みます」
我武者羅にトップヒーローを目指し突き進みたいと目を輝かせ暴走する子らを何度も見てきた。その度にブラドは足を止めさせ指導してきた
だが、このタイプは珍しいと感じた
「(安全より経験を求める、ということか…？)」
ブラドにはAの父の言葉が、金輪際負けないように鍛え突き進めと言っているように聞こえた
子供の身を案じるというより、黒星をこれ以上作らせたくないと言っているような
「この子は、エンデヴァーを越えるべく生まれたのです」
「……わかり、ました。ご意向に添えるよう尽力させていただきます」
「ではこの話はこれで終いですね。入寮日も承知しましたのでまたその日に。A、続きをするからついてきなさい」
話は終わりだとさっと立ち上がり綺麗に一礼すると音もなくAの父は背を向け歩き出す
「……」
「……氷叢？」
なにか言いたそうな表情で顔を白くさせたAは心配げに覗き込むブラドと一度目が合うと泣きそうに少し顔を歪ませ、すぐに唇をきつく閉じた
「…ご足労、いただきありがとうございます」
「……あぁ、また学校でな…」
絞り出したその声が震えているような気がしたが、ブラドはその理由がわからず見送ることしか出来なかった
．
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作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2023年2月2日 14時
