【ヒロアカ】平和とはなにか3 (ページ14)

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ガラリと音を立てて扉を開けて中に入ると、そこには身体を起こして目を開けているAの姿
目元は少しまだ赤いが見慣れている友の姿に自然と肩から力が抜ける

「回原」

「A」

起きて間もないからか少しゆっくりとした動作で正面から視線をずらすとポツリと名前を呼んでくれる

それに回原も呼び返したら

「……この、獣､何…？」

「いやそれこっちのセリフだから！！」

予想外すぎる問いかけにビシリと右手が綺麗に宙を切った
まさかの言葉に驚きに目を見開くもAの表情は混乱と不安が混じったようなそれで冗談を言っているようには見えなかった

「え、マジで言ってる…？」

念の為にとそう問いかければ恐る恐ると言ったようにひとつ頷きが返ってくるものだから2人してしばし固まった

回原視点、いきなりAを守るように現れた獣。見た目も氷像のような出で立ちなのだ。Aの個性だとばかり思っていたのだ

「……ま、まぁ今拳藤がブラド先生に連絡してるからさ。ここ来るだろうしその時話そうぜ」

「え、こいつそれまでに攻撃してくることない？」

「ないと思うぞ、俺はそいつがお前を守ってるように見えるからな」

「……守ってる？」

Aから出てきたように見えた氷の獣

さっきまで唸っていたのにAが目覚めてからは窓側に伏せってじっとこちらを見つめるのみだった
宙に留まることも出来る動く氷像

そんなこと出来るのはAの個性でしか考えられない

「(Aの意思関係なく動いてる、んだよな…生きてるのか？)」

輪郭はあるものの全身が氷でできている獣、Aの個性でもある雪豹そのもののようにみえるそいつはさっきと違い穏やかそうな双眸でじっと回原を見つめていた

敵か、味方か

そう問われているようで

「A、もう平気か」

「……うん。記憶から2日経ってて驚いてるけど」

「寝すぎだ、ばか」

「うん、ごめん」

「心配した」

「ごめん」

「俺こそごめん」

「……回原は何も悪くないよ？」

「俺が言いたいんだ！ダチ1人守れねぇ奴でいたくない」

そう言ってそっと手をAに伸ばす

個性で人を傷つけることもできるその手を

Aの頭に乗せてその髪の柔らかさを感じる

不思議そうにこちらを見つめるAをじっと見返す

「役立たずでごめん。1人でよく頑張った」

「……」

“生きててくれてありがとう“

その言葉は飲み込んだ

漫画の世界の言葉のようなそれを現実で言うことになるなんて

己の目指す道はそういう世界なのだと

再認識した

．