【ヒロアカ】平和とはなにか3 (ページ13)

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「はい、じゃあ名前言えるかな？」

「…氷叢、Aです」

「じゃあ今、どこか痛いところあるかな？」

「特に、ありません」

あれから回原は固まってた体をなんとか動かし枕元にあるナースコールを押した。医者と看護師が来るまでに拳藤がAをあやして泣き終わる寸前くらいに到着した

人が増えたことで警戒レベルあげようとした獣は拳藤が目で制してその場に留め、医者達は恐る恐るといった様子で今、Aの検診をしている

「…お前、正体不明の獣を目で制するって、どんだけだよ」

「この場で暴れられたらヤバいだろ…成り行きだ。それに、あたしは何か考えがあったわけじゃない、懇願するしかなかったんだ」

「…」

少し悔しそうに俯く拳藤をみて羨ましいと回原は思う

もっと上手くやれたかもしれないと思えることが

そしてそれがさっきの自分と違って

できるだろうと思えるから

「(けどさ、それって体が勝手に動いたってことだろ……それってヒーローじゃんか)」

「氷叢、なんともないといいな」

悔しそうな表情から友を心配するそれに変わる

純粋に心の思うままにいられる拳藤が眩しく感じた

泣いている友に声一つかけられなかった自分との差に

「なんかあったら、困んだよ…」

「回原？」

ぐっと唇を噛みしめ滲んだ血の味と少しの痛み

Aの痛み苦しみはこの比ではないだろうがこれを忘れまいと強く心に刻む

「あいつが弱ってたら面倒みるの俺だろが」

「…はは、なんだそれ。嬉しいくせに」

惨めにないものねだりして誰かを羨んでも

成長は何一つない

やれることを増やす事

またこんな気持ちを抱かないために己がやるべき事

それはこの痛み苦しみ、悔しさをバネにして前に進むこと、だ

「とにかく！一安心したってことだよ！！」

「はいはい、ま…そうだよな。みんな生きてるし」

「そういうことだ！」

少しの恥くらいもうどうでもいい

生きていた、それって本当にすごいことで

めちゃくちゃ嬉しいことなんだから

「あ、そうだ。あたしブラド先生に連絡してくるからここ任せていいか？」

「おう、任された」

いつもの調子を取り戻した拳藤がそう言って階下に向かう背中を見送る

「…そういえば、Aの親って起きたこと知ってるのか？」

「お待たせ、診察終わったよ」

ふと浮かんだ疑問は誰に聞かれるでもなく

「あ、はい。ありがとうございます」

医者に声をかけられたことで慌てて病室に足を向けたのだった

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