10 ページ31
暗い、暗い深海のそのまた奥のような何もない空間
その真ん中か端か、どこか分からないがぽつんと一人
蹲りその揺蕩う水の中
無重力空間のようなその場所に一人踞る
ここは何もないし何も感じない
死後の世界のような気もするけど
己の心の臓の脈動が聞こえるから生きているのだろうな、と
Aはふと思う
目を開けてるのか閉じてるのかも分からない真っ暗な空間
でもそれが恐怖も何もかも全ての感情を感じなくてすむのだろうと理解できてるからどこか安心できた
『…そこで寝るのか』
どこからかそんな声が聞こえた
『俺がお前の身体もらうぜ。いいのかよ』
＿＿…いいよ、好きにすれば
口は動かさずとも聞こえてきたその声にAはそう声をかけた
心と心が自然と通う
直感的にその声は味方だと思えた
ずっと一緒にいてくれていたような
最近知り合ったような不思議な感覚
『…俺はお前の好きを全部壊すかもしれないぜ？それでも…』
＿＿…
『俺は、お前が幸せだったらそれで良かったんだ…』
泣きそうにそう話す
ずっと傍にいてくれたような初めて会うような不思議な感覚
Aの頬を誰かの涙が濡らす
それがあまりにも綺麗でAは何故か久しぶりに心が穏やかな気持ちになった
＿＿君は、ぼくの嫌がることはしない。きっと
『…』
その無言は、Aの言葉を肯定しているようなものだった
『俺は、世界を許さない』
そう言って涙を流すもう一人のA
彼はずっと泣いてるな、と思った
＿＿僕の変わりに世界をみて、まかせるから
自分では世界を壊すだけだから、きっといてはいけはい
けど君なら世界に溶け込めるのではないだろうか
そんな気がする
＿＿もし君が世界を許すなら…
大好きだった人たちを守ってほしい
『…俺はお前以外守るつもりはねぇ』
不貞腐れたようなその声にAは僅かに笑って、また目を瞑る
ここは暗くて何もない
けどどこかあたたかくて居心地が良かった
微睡むように意識が途切れていく
＿＿おやすみ、…またいつか……
『…また、』
死を望んだAがまた、と言葉を残してくれたことに少しほっとする
冷えきった鈍色の卵は微かに胎動をする
その殻が割れる日はいつになるのか…
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みけいぬこ(プロフ) - mikittyさん» ありがとうございます！ (2022年9月30日 7時) (
レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です！ (2022年9月29日 14時) (レス) @page45 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - さきさん» わわわっ！なんという休日の使い方！嬉し申し訳なし<(_ _*)>でもありがとうございます！とても嬉しいですっ気づけばもう12…まだ続きますので更新頑張っていきます！ (2022年9月27日 7時) (レス) id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - ガチで一気読みしました！！！！！！休日一日費やした。面白くてやばいです（？）語彙力失うくらい。更新待ってます！！ (2022年9月26日 22時) (レス) @page37 id: 9fc0d0edba (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - 彩都さん» コメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいコメントꉂ( ˃ ⌑ ˂ഃ )日本語おかしくて嘆いてる私に優しい言葉嬉しいです！早足で終わらせた気が否めませんが…黒くん編行きたいと思います！目指せハピエン！( ߹ ^ ߹ ) (2022年9月22日 19時) (レス) @page29 id: b16ff3489c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みけいぬこ
| 作成日時：2022年9月13日 14時
