【うらたぬき】デビルズ・シンデレラ【あほの坂田。】 (ページ9)

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2.届いた招待状ページ9

「お話中に失礼します。A様、そろそろ国王様がお戻りになられます」

「え……あ、もうそんな時間ですか」

ちら、と時計を見やれば、それは確かにいつもお父様を迎える時刻を指していた。

続いてさかたを見ると、彼はにこりと笑ってソファから立ち上がる。

「なら、俺も挨拶行く！」

そう言い切った彼に、「え」と咄嗟の声が唇の端から漏れた。
そんな私に、くすくすと指を唇に近付けるさかた。

「流石に何も言わずに帰るわけには行かへんやろ？」

「そう、なんだけど。なんかびっくりして……」

「あ、さては俺がちゃんとしてるのにびっくりしたとか言うんやろ！このやろ！」

ころころと、表情が二転三転。
まるで子供のようにぷく、と頬を膨らませるさかたに、私もつられて笑みが零れた。

「ふふ、ごめん。……あの、赤の王子もいいですか？」

「勿論です。ではこちらに」

メイドの案内で廊下に出て、さかたと共に歩くと、かつかつ、とお互いの靴の音が廊下に響く。

見慣れた景色も、さかたが隣にいるだけで随分と違って見えた。

「Aのお父さんと会うのも久しぶりやんな」

「白の国王、ね。せめて第一声は敬称で呼ぶのが礼儀だよ」

「あ……せやな」

「もう。……そうだね、さかた忙しかったみたいだし」

は、と気付いたように肩を揺らすさかたに苦笑いしつつ、返事を返す。

さかたの言う通り、彼がお父様に会うのはかなり久しぶりだ。
お父様のお仕事が繁忙期になったのと、さかたの王位継承に向けての動きが同時期に重なったこともあり、なかなか会う機会がなかったのだとか。

それに、お兄様ともーー

「……あ、さかた、あのねーー」

「A様、赤の王子。国王様がお戻りになられました」

私が紡ぎかけた言葉を遮るように。
メイドが、正面玄関を手で指し示す。

言葉を切ってそちらを見れば、そこにはたくさんの人の群れ。
メイドや執事がぺこりと頭を下げる中を歩く家族の姿があった。

「さかた、行こう」

少し早歩きになって正面玄関に急げば、その後ろをさかたがついてくる。
それを気配で感じながら人の群れに近付けば、真っ先にそれに気付いた「その人」が声を上げた。

「あ、A！」

ちょっと高めのよく通る声。
そんな声で呼ばれたからか、メイドや執事が私たちに気付き始め、揃って道を開け始める。

視界が開けた、その先には。

「お兄様」

真っ白な髪と、透き通った真っ赤な瞳。
少し華奢な身体と整った顔の、兄がいた。