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「そらるさん!」


お兄様の表情がぱぁっと明るくなり、瞳に携えたルビーが輝く。

そらる。
それが彼の名前だろうか。


「お元気でしたか?」

「うん……まぁ、そこそこにね」


青みがかった黒髪、とろんとした垂れ目がちの紺碧の瞳。
色白の肌にそれはよく映え、まるでひとつの芸術品かのような統一感を醸し出している。

一言で言えば圧倒的美形。
長々と語るのであれば恐らく語り尽くせない。

そんな彼をじ、と見つめていると、不意にその瞳が私を捉えた。

びく、と肩を揺らし、僅かに後退ってしまう私に、その瞳は仄かに細められた。

元々が垂れ目なのもあって、その様子は驚く程に優しく穏やかなもので。
その瞳の不思議な安堵感に包まれていると。


「白の王女、で間違いない?」

「え、あ、っと、は……い」


そう声をかけられ、さらに大きく肩が跳ねた。

私が王女だと知りつつも、その態度はやけにフランク。
となると、この人はーー


「青の国の王子、そらるです」


そう言って軽く腰を折る彼ーーいや、そらる様を見つめながら、私はどこか心の底で納得していた。

やけに落ち着いた佇まいも、お兄様との関係性も、それなら全てに筋が通る。


「……あ、私はーー」

「あぁ、大丈夫。白の国の王女、A、でしょ。まふから話は聞いてるよ」

「はい。光栄です、そらる様」


ぺこ、と私も腰を折れば、そらる様は苦笑いを零す。


「いいよ、様とか、そんな堅苦しくしないで。俺そういうの苦手だから」

「……え、でも」


一応、これは王族共通の礼儀なのだ。
答えに困って、お兄様を縋るように見つめる。

私の視線に気付いたお兄様は、大丈夫、とでも言いたげに小さく口角を持ち上げた。


(お兄様がそう言うなら、いい、のかな)


とは思いつつも、いざ呼ぶとなると困る。
不敬にならないかつ堅くなり過ぎない呼び方。


「……では、そらる……さん」


お兄様を倣って、さん付け。
結局、それしか出てこなかった。


「うん、ありがとう。そっちの方が好き」


目の前で浮かべられた嬉しそうな笑みに、「う」とくぐもった声が漏れる。
綺麗な顔が、やけに目に毒だ。

目を逸らす訳にもいかず、たじろいでいると。


「あ!」


ぽん、と手を叩く音と、少し高い声が隣から上がる。

驚き故の反射と、そらるさんの瞳から逃げるため。
そちらに素早く視線を流せば、そこには手を身体の前で合わせた体勢のお兄様がいた。


「そらるさん、さかた見てないですか?」

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over the rain - 新作おめでとうございます!文才がメッチャあって、さらに設定もメッチャ上手で、最高です!応援してます! (2019年12月26日 8時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年12月25日 16時

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