【うらたぬき】デビルズ・シンデレラ【あほの坂田。】 (ページ14)

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「う、わぁ……！」

視界を彩った光景に、思わず感嘆の声が漏れた。

天井で煌々と輝くシャンデリア。
その光を余すことなく反射する宝石のような床。
花咲くようにあちこちで揺れる華やかなドレスと、ステップを刻む靴。
鼻腔を擽る芳香に頬が緩み、耳に届くメロディに胸が高鳴る。

これが、パーティー。
ーーこれが、社交界。

「凄い……！凄いですお兄様！」

「そうだね。……僕も、こんな規模のパーティーは初めてだなぁ」

いつも心掛けていた落ち着きを忘れてはしゃぐ私を見つめる、お兄様の優しい尖晶石(スピネル)。
様々な色を浴びるその輝きからも、僅かな興奮が見て取れた。

どうやら、かなり豪勢なパーティーらしい。
他に比較する対象を知らない私にはよく分からないが、お兄様を反応を見るにそういう事なのだろう。

「……あ、さかたは……さかた、いますか？」

「うーん、どうだろう。少し歩き回ってみる？」

「あ……ご迷惑で、なければ」

は、と我に返った。
急に落ち着きを取り戻した私を見て、お兄様は「いいのに」と微笑み、手を差し出す。

(はしゃぎ過ぎないようにしないと……私だって、一国の王女なんだから)

こほん、と一つ咳払い。
「忘れてください」と一言返して、２度目の手を取る。

人混みを分け、少しだけ前を歩くお兄様の背を追うーーというよりは、隣を歩きながら、辺りを見回す。

……けれど、比較的小柄な私は、ほとんど人波に埋もれてしまって周囲が見えない。

私は小さく息を吐き、周囲の観察を諦めた。
お兄様と離れないようにすることだけに集中して、少しだけ手を握る。
お兄様が微かに笑った気配がした。

「大丈夫？」

「……何とか」

なんてやり取りをしていると、人混みを抜けたようで、視界が開ける。
今度はシャンデリアの光が瞳を刺して、視界がチカチカと点滅した。

「流石に、疲れました」

ふぅ、と大きな息を吐いた私に、お兄様は少し心配そうな視線を向け、手を離す。

「少し休む？」

「……いえ、大丈夫です」

とはいえ、正直かなり疲れたのも事実で。
もう一度、大きく息を吸って、吐いたーー

「あれ、まふ？」

ーー瞬間、微かな声が耳朶を打つ。
それと同時に身を翻したのは、お兄様。

私もそれを追ってお兄様と同じ方向を向けば。

「来てたんだ」

にこりと微笑んで手を振る、青い瞳の男性がいた。