検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:38,940 hit

ページ4

「……はぁ?」


それが、大量の書類を抱えて2年1組の教室に戻ってきた私が事の顛末(てんまつ)を話し終えた後、彼ーー折原(おりはら) センラくんが上げた第一声だった。

教室の喧騒(けんそう)に混じって響いたその声に、私は小さく苦笑いを零す。


「ということで、今日の放課後時間ある……?」


遠慮がちにそう問いかけた私の目の前で、彼はばたんと机の上に崩れ落ちた。

「嘘やぁ……」と漏れ出た声は小さい。

完全に生気の抜けた声に少し申し訳なくなってしまったけれど、正直彼はこれ以上ないくらいに心強い存在だった。

センラくんは、大抵の事はソツなく、いやむしろ人一倍素早くこなすことが出来る。

それはパソコン作業に対しても同じことで、彼が居れば今回の仕事を間に合わせられる確率がぐんと上がるのだ。


「ごめんね」


それでも巻き込んでしまったことは申し訳なく思っていたから、その気持ちを素直に口に出すと、センラくんは顔を上げてへらっと笑った。


「んーん、小鳥遊さんは何も悪ないやろ。……分かった。放課後生徒会室でええ?」

「うん。ごめん、ありがとう」


会話が途切れ、私はくるりと身を翻す。


別に、センラくんとは普段からよく話す仲では無い。

ただ同じ生徒会に所属しているというだけの関係で、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

それに、正直彼と話すのは少し怖かった。
主に、周りの視線が。

センラくんは、飛び抜けてルックスが良い。
その上成績優秀、運動もできる。
顔が良くてなんでも出来る完璧人ときたら、女子からの人気が高いのも当然の摂理(せつり)だ。

少女漫画の世界によくある、「学校中の注目を引く存在」だと言っても過言ではない。

リアルでそんな人に出会うだなんて。

一年前の入学式から数日、早速学校中で広まっていた噂を聞いてそう思ったのを覚えている。


(あの人と話してると、周りの目が痛いんだよなぁ)


今は落ち着いたけれど、さっき彼の席付近で話していた時の視線の突き刺さり様は異常だった。

いや、異常という言葉が「普段とは違う」ことを指すのであれば、この言葉選びは適切ではないかもしれない。


いつだって、彼と話をする時は、例えそれが仕事の内容だとしても、女子から嫉妬と嫌悪の視線を刺されることになるのだ。


(大変だなぁ、センラくんも)

*→←1.無茶無謀な頼み事



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
379人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , センラ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

acotatta(プロフ) - とてつもなく面白いです...!!夢主ちゃん可愛いし描写うますぎませんか?! 応援してます〜!! (2019年9月18日 0時) (レス) id: 8be6c7c599 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年9月16日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。