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ーーキーンコーンカーンコーン、と。

静寂に包まれていた生徒会室に、高らかな鐘の音に似た聞き慣れたメロディーが響いた。

はっと顔を上げれば、時間は既に8時半前。
登校完了時刻5分前を告げるチャイムだ。


「……センラくん、そろそろ教室戻らないと」

「ん、ちょいまち。もうこれ終わる」


あれから、予定通り7時前に学校に着いた私たちはまっすぐに生徒会室に向かい、昨日と同じ作業を黙々と続けていた。

会話は僅か。
ぽつりぽつりと、どちらかの独り言に少し反応するくらいで、ほんの気休め程度。

ほとんど意識は資料に注いでいた……というのに。


「やっぱり終わんないよこれ……」


その割にはあまり進まなかった手元の資料に目を向け、盛大な溜息をその紙切れに落とす。

やっと半分近く終わったくらいだろうか。
とにかく、今日の空き時間全てを注いだとしても終わりそうにないくらいの量は残っている。

目の前で、作業に一段落着いたらしきセンラくんも顔を上げ、小さく伸びをした。


「んー、確かにちょーっと雲行き怪しいなぁ、このままやと」

「だよね……」


2回目の溜息が、ほぼ無意識に吐き出された。

それは酷く陰鬱なもので、自分で聞いてもさらに気が重くなる。
鬱になりそうだ、冗談抜きで。

兎にも角にもこの気持ちを切り替えようと、私は重い腰を持ち上げる。

それを視界にとらえたセンラくんが腕を下ろして立ち上がるのを横目に、私はざっと資料を整理して身を翻した。


「まぁ、何とかなるんやない?」


そんなのほほんとした声が背後から聞こえて、私は「何とかなればいいけど」の返事と一緒に引き戸を開いた。

ぶわっ、と、顔を張り付くように撫でる生温い夏の空気。
乾いていればまだいいのだけれど、梅雨明けなだけあってその空気はいやに湿っぽかった。


「終わらなかったらどうしよ、ほんと……」


それを吸ったせいか、やけに下向きな意見がぽつ、と落ちる。

半ば無理矢理とはいえ、請け負った仕事を終えられないのは罪悪感しかない。
どうにかして終わらせたいとは思いつつも、そのための方法が見つからないのも事実。

……いや、ひとつだけなくはないのだが。


「最悪終わらへんかったら土日に進めなあかんなぁ」


その「ひとつだけ」の方法を、センラくんが軽い口調で零した。

土日すらも仕事に潰されることになるその方法に、私は「う」と小さな呻き声を漏らす。

私だって、普通の学生だ。
休日くらい休みたい。

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acotatta(プロフ) - とてつもなく面白いです...!!夢主ちゃん可愛いし描写うますぎませんか?! 応援してます〜!! (2019年9月18日 0時) (レス) id: 8be6c7c599 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年9月16日 18時

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