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「え……?」


はっきりと、そう言い切った坂田くん。
無意識に顔が持ち上がり、彼と目が合う。


「なんで怒らなあかんの?」


心の底から不思議そうに首を捻る坂田くんを、私は唖然として見つめてしまう。

ぱくぱくと動く、私の唇。


「だって、私、みんなとの約束……覚えてないんだよ」


どうにか紡ぎ出した自身の言葉に、ぐさりと胸が痛む。
まるで刃に貫かれたかのような圧倒的痛みの罪悪感に、私は唇を噛んだ。

けど、坂田くんはーー


「A、別に悪ないやろ?」

「……え」


なんの曇りもない真っ直ぐな赤い瞳で、そう言って微笑むのだ。

口の端から落ちた二度目の「え」は、横に流れた夏風に乗って何処かへ行ってしまっただろう。
それ程までに、困惑とほんの少しの安堵が混ざった、重さの抜けた声だった。

大きな動揺を抱えながら、助けを求めるようにうらたくんに視線を移せば、彼からもにっ、と笑みを向けられる。


「Aはずっと辛い思いをしてきた。 なら、ずっと昔のたった一週間を忘れることくらい、当たり前にあることなんだよ」

「でも……でも、みんなは、覚えてくれてて……」

「そもそも、二十年近く昔のことを覚えてる俺らの方がおかしいんだよ。……言わば粘着質、つーか……」


自虐気味な苦笑いと共に頬を搔くうらたくん。

「そんなことない」と、掠れた声が咄嗟に飛び出たけれど、二人は微笑むばかりで言葉を重ねることはなかった。


「……な。やから、笑っててよ、A。……そんなに、辛そうな顔せんといてよ」


懇願にも似た坂田くんの呟き。

……それが耳に届いても、私の中の靄が晴れることはなかった。
延々と燻る罪悪感は一向に溶ける気配がない。

いつまで経っても彼らの願いに応えない私に、二人の表情も徐々に沈んでいく。
それにまた申し訳なさが募って、こんなのただの悪循環。

ぐるぐる、ぐるぐる、出口もなく曲がりくねる感情の廻廊。

ーーそこに、小さくも明るい、鮮やかな光が差したのは、重い空気に耐えかねた私が小さく息を吸った時だった。


「じゃあまたしましょうよ、約束。忘れてしまったもんは仕方ないんやし」

「せやせや。傍から聞いてりゃうじうじうじうじ……お前は小さい頃から変わってへんのか?」


初夏の空気にも似た、爽やかで凛とした声。
少し棘のあるその言の葉は、軽やかに沈みきった湿っぽい空気の中を吹き抜ける。


「……え……あ」


振り向けば、そこには柔らかな金と紫が揺れていた。

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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きがきになる・・・更新頑張ってください! (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい!更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年7月21日 16時

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