ｰ琥珀との記憶ｰ ページ35
その日の私は、怪我をした。
大したことではなかった。
ただ、小石に躓いて転んだだけだった。
それでも、お父様やお母様、家臣の人達は、大袈裟な程に慌てふためいて。
私を直ぐに、同行していた直属の医者の元に連れていこうとしたーーのだが。
その医者を何故か毛嫌いしていた幼い私は、頑なにそれを拒み。
結果、村の医者にかかることになったのだった。
ーーそこで出会ったのが、彼だった。
いや、出会ったのはもう少し前、うらたくんに友達を紹介された日だ。
正確に言えば、言葉を交わした、が正しいだろうか。
当時の彼ーーセンラくんは、これ以上ないくらいに無表情で、言葉一つ交わさない無愛想な少年だった。
……私に対して、だけ。
「センラ、奥から
「うん」
どうやら彼は、この医者の息子らしく。
穏やかな表情で話すふたりは、まさに家族だった。
ただ、その笑顔は、私と目が合うと一瞬で凍りつく。
幼い私は、それがただただ不思議だったから。
おまけに、前日の志麻くんとの会話で謎の自信を得たせいで、活力に溢れていたから。
脚の治療の後、籠を持ってふらりと家を出ていったセンラくんを追いかけたのだ。
彼が向かったのは、村を少し出たところの山の中。
行ったことがばれるとお母様に怒られそうな、少し荒い地形の場所。
「セ、センラくん！」
上げた声に、彼は振り返ってくれた。
ただ、その顔は鉄仮面を貼り付けたかのように冷たい無表情で。
ぐ、と声に詰まるけれど、私は言葉を続けた。
「ど、どこ行くの……？」
きっと、前日までの私ならこんな勇気、到底湧かなかっただろう。
振り絞った勇気の一言に、彼はーー
「……あなたには、かんけいないですよね」
そう、冷たく言い放ったのだった。
「え……」
凍りつく私には目もくれず、彼は山道を進んで行って。
我に返った私は、それを追いかけながら声をかけ続けた。
本当に、前日の様子からは考えられないほどの勇気だったと思う。
何度か話しかけても、全く返事を返してくれなくて。
もう諦めかけていた時、本心が漏れ出た。
「どうして、そんなに……つめたい、の……？」
涙が滲んだ声。
それに、センラくんが勢いよく振り返った。
「知りたいですか？」
「……ぇ……」
その表情は、怒りと嫌悪。
溢れんばかりの憎しみと共に、彼は吐き捨てた。
「あなたが、だいきらいだからですよ」
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ちょこ - 更新が止まってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！ (2020年7月11日 23時) (
レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
狐 - 続きがきになる・・・更新頑張ってください！ (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい！更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！ (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星奈 ふゆ | 作成日時：2019年7月21日 16時
