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「……A？ やっぱり、何か……」
心配そうなその声に、どきっと跳ねる心臓。
落としていた視線を持ち上げた先にはやっぱり、心配そうに表情に陰を落とした坂田くんがいる。
(いけない、また心配させてしまった)
無理矢理上げた口角。
頬はやけに重たくて、笑顔ひとつが何だか疲れる。
それだけ私の中には、これからの逃避行への葛藤が
「なんでもないよ」
上手く笑えていなかっただろうか。
私を見つめる坂田くんの瞳は、未だに
赤い瞳を見ていられなくて、私はあからさまに視線を逸らしてしまった。
その視線は、布団の上で組まれた自身の手へと。
傷一つ無く真っ白なその手は、私が正真正銘の箱入り娘であることをまざまざと感じさせる。
(「醜い」と思ってしまうのは、どうしてだろう)
他の人が見れば、この手を羨ましがるだろうか。
綺麗な手だね、と褒めてくれるだろうか。
残念ながら、その言葉を真っ直ぐに受け取れるほど、私の心は綺麗じゃない、純粋じゃない。
坂田くんには気付かれないように、考え事をして詰まっていた息を吐く。
荒々しくささくれ立った心がほんの少しだけ、本当に微かに落ち着いて、改めて坂田くんと目を合わせようとしたーー
ーーその時だった。
「……っ、え」
ふわりと鼻腔を撫でた、ほんのり甘い
ぎゅっと強く、でも優しく、そっと身体を包む温かい感触。
頬に当たり、くすぐったさを残す深紅の影。
「分かりやす過ぎやで、A」
呆れたような声色で、囁くように言われたその言葉は、耳元で響いて鼓膜を揺らす。
坂田くんに抱き締められているのだと気付くのに、たっぷりと十数秒かかってしまった。
「え、ちょっ、と、坂田くん……？」
咄嗟に慌てて身じろぐけれど、敵わない。
(昔と全然違う……)
抵抗を諦めた私は、だらりと身体の力を抜いて。
そんな私の背を、坂田くんは優しく撫でた。
「無理には聞かへんけど、あんまり溜め込まんとってな」
私が悩んでいることには気付いているはずなのに、無理に聞き出すことはしない。
いつもの元気な坂田くんとはかけ離れた、優しくてどこか大人気のあるその雰囲気。
その姿に懐かしさを覚えて、私は小さく笑ってしまった。
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ちょこ - 更新が止まってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！ (2020年7月11日 23時) (
レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
狐 - 続きがきになる・・・更新頑張ってください！ (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい！更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！ (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星奈 ふゆ | 作成日時：2019年7月21日 16時
