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「……え?」
そういえば下ばかり見ていてブラックの姿を全く見ていなかった。
声に反応する様に上を向くと、彼の表情は出会った時のにやにや顔のままだったが、どこか真剣そうな眼差しでこちらを見ていた。
思わずドキリとときめいてしまったのはきっと、この肌寒い空間で一際熱い視線に当てられてしまったのだろう。
「契約って?」
「オレちゃんと一緒に人気YouTuberを目指しましょう!貴方の鬼ヤバな発想と撮影技術と編集技術は是非とも欲しいものです!オレちゃんはこう見えてかなり有名YouTuberですので、最近アシスタントを一人くらい雇おうかと思っていた所だったんですよ。いかがです?」
まさか気まぐれでこちらに来ただけの悪魔にそんな事を言われるとは思わなかった。
そしてその言葉に自分がこんなにもワクワクするとも思っていなかった。
契約すればこの流れる景色を思い出だけに留めなくてもいい。彼の身にこうして触れる事も許されるし、楽しい時間を作る事も出来る。
そんなの、断る理由が何一つ無いじゃないか。
「カーカッカッカ!オレちゃんがわざわざ聞かずとも、もう決まっているかの様な顔してますね〜!本当にお決まりでしたら、こちらの契約書にサインを。」
初めて貰った物同様、ずっしりと重くて分厚い契約書……更にはボールペンまで手渡されてしまった。
どちらともしっかりと自分の腕の中に抱き締める。
景色に飲み込まれない様に、風に奪われない様に……このチャンスを、二度と逃さない様に。
「よし、じゃあ目的地に到着するまで目を通さないと。うわ、暗っ!読み難っ!でも読む。」
「え〜?それもちゃんと読むんですか?もうオレちゃんを信用してササッとサインしたらどうです?」
「嫌だ!絶対にブラックの言葉全部は信用しないから!今度はきちんと一語一句、読み間違いも無いようにしないと……あ、ほらここ!あとここも直して!」
「カーカッカッカ!バレてしまいましたか!本当に、しょうがないお方ですね〜!」
真っ暗で静かな世界に、ペラペラと契約書の束を捲る音だけが響く。
ブラックの腕の中で集中して契約書を読み耽る最中、目的地まで少し遠回りしてくれていたらしいのだが……これも契約の内なのだろうか?
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10590000(プロフ) - 応援してます。頑張ってください!続き待ってます。 (2021年4月10日 20時) (レス) id: 5d88188efd (このIDを非表示/違反報告)
池百(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。励みになります。ブラックチャンネルの舞台が学校や友達に関する事が多いのでそれに反発(?)した結果こんな事に…ですが面白いと言ってもらえてとても嬉しいです!ホッとしました…(´°ω°`) (2021年3月15日 5時) (レス) id: 5b21d24280 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - なんでしょう、ものすごくスカッとしました。内容も面白かったし、続きを楽しみにしています。 (2021年3月11日 21時) (レス) id: 38063781d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:池百 | 作成日時:2021年2月27日 7時